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第五十六話 鳥籠に囚われた者たち
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だって愛しみを宿した瞳をしていた。

人を殺すときは、何も――何も瞳にうつしてはいなかった。

あなたの瞳がうつしているものは何?と聞けたらどれだけ楽だろうか。もし聞けたとしても、あなたは答えてくれるだろうか。きっと、それはない。わかっているからこそ、口に出すことをためらってしまう。言えば何かが変わるかもしれない。けど、なにかがおわってしまうかもしれない。そんな恐怖が私を襲う。

唯一つ、わかることがあるとすれば―――どんな時でも、あなたの瞳は深い深い闇の深潭を覗き込んでいるよう。それは美しくもあり、とても・・・危ういものだと思う。だけど、私にできることはなく、結局は彼に助けられてばかり。あの時も、今回も。

「結局、私は守られてばっかりなのかな・・・」

『そうじゃないだろ』

「え・・・?」

声のした方を向いてみると、ここにいるはずのない人物がいた。それは誰よりも知っている人物。あの世界で出会い、尊敬し憧れ、そして愛した剣士がそこにいた。だが、どこか違和感がぬぐえない。目の前にいる人物は本当に恋人なのだろうか、そんな意味合いを含めて名前を呼ぶ。

「ソレ、イユ・・・?」

『お前はあの世界で真の“強さ”を知った。それに憧れ、あの世界の中でずっと追い求め続けて来た』

スルーされた。だが、そんなことはお構いなしに話を続けられてしまう。

「言ってる意味が・・・」

『お前なら辿りつけると信じてるよ。だから、あきらめるな』

それだけ言うと、ソレイユの姿をした何かはだんだんと薄れていってしまう。咄嗟に腕を伸ばすが、届く距離ではなかった。何か言おうとするが、言葉が浮かんでこない。そんな自分に彼は微笑みながら口を開いた。

『――――――――』



がばっと勢いよく身を起こすと、そこは鳥籠の中だった。隣ではアスナが寝息を立てながら眠っている。

「ゆ、夢・・・?」

あまりにもリアリティのある夢だったが、今になって一つだけ気になることがあった。夢に出てきた彼。姿形から声まで一緒だったが、どこか別人のように感じた。しかし――

「そうだよね、諦めるのは私の性分じゃないもんね」

そういって気合を入れなおすルナ。彼女の瞳には悲壮感はなく、不撓不屈の意思が見て取れた。

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