フェアリィ・ダンス編〜妖精郷の剣聖〜
第五十六話 鳥籠に囚われた者たち
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
だって愛しみを宿した瞳をしていた。
人を殺すときは、何も――何も瞳にうつしてはいなかった。
あなたの瞳がうつしているものは何?と聞けたらどれだけ楽だろうか。もし聞けたとしても、あなたは答えてくれるだろうか。きっと、それはない。わかっているからこそ、口に出すことをためらってしまう。言えば何かが変わるかもしれない。けど、なにかがおわってしまうかもしれない。そんな恐怖が私を襲う。
唯一つ、わかることがあるとすれば―――どんな時でも、あなたの瞳は深い深い闇の深潭を覗き込んでいるよう。それは美しくもあり、とても・・・危ういものだと思う。だけど、私にできることはなく、結局は彼に助けられてばかり。あの時も、今回も。
「結局、私は守られてばっかりなのかな・・・」
『そうじゃないだろ』
「え・・・?」
声のした方を向いてみると、ここにいるはずのない人物がいた。それは誰よりも知っている人物。あの世界で出会い、尊敬し憧れ、そして愛した剣士がそこにいた。だが、どこか違和感がぬぐえない。目の前にいる人物は本当に恋人なのだろうか、そんな意味合いを含めて名前を呼ぶ。
「ソレ、イユ・・・?」
『お前はあの世界で真の“強さ”を知った。それに憧れ、あの世界の中でずっと追い求め続けて来た』
スルーされた。だが、そんなことはお構いなしに話を続けられてしまう。
「言ってる意味が・・・」
『お前なら辿りつけると信じてるよ。だから、あきらめるな』
それだけ言うと、ソレイユの姿をした何かはだんだんと薄れていってしまう。咄嗟に腕を伸ばすが、届く距離ではなかった。何か言おうとするが、言葉が浮かんでこない。そんな自分に彼は微笑みながら口を開いた。
『――――――――』
◆
がばっと勢いよく身を起こすと、そこは鳥籠の中だった。隣ではアスナが寝息を立てながら眠っている。
「ゆ、夢・・・?」
あまりにもリアリティのある夢だったが、今になって一つだけ気になることがあった。夢に出てきた彼。姿形から声まで一緒だったが、どこか別人のように感じた。しかし――
「そうだよね、諦めるのは私の性分じゃないもんね」
そういって気合を入れなおすルナ。彼女の瞳には悲壮感はなく、不撓不屈の意思が見て取れた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ