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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲
第壱話 《損傷した者》〜後編〜
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ても似つかない少年が、シキに駆け寄った。
「……あ、ああ。大丈夫……?」
うずくまっていたシキは、目を細めそのまま床を凝視した。
そこに、線が見えるのだ。
それも、一本ではない。複数の線が絡み合い、まるで子供の書いた落書きのようにグチャグチャだ。
顔を上げると、建物にも、植木にも、紅ローブにも、そしてキリトにも線が書かれていた。
「な、何だ、これは……!」
自分の手を見つめても、線は書かれていた。手鏡に映る自分の顔を見ても、やはり線は書かれている。
「……っああぁ!!」
痛みに耐えるように身をよじり、シンが咆哮をあげた。
「おい、シ……!?」
声を掛けようとして、驚愕した。
確かにそこにはシンが居る。居るのだが、その姿が奇妙なものに成っていた。
上半身の装備が消え去り、皮の靴に丈の短いパンツ。そして全身に黒い刺青が走り、それに沿って青緑の線が引かれていた。
「…………?」
手鏡を見つめ、シンはしばし呆然としていた。
シキは彼に駆け寄った。
「シン、お前、どうしたんだ!? その姿は」
「……分からない。頭痛がして、気付いたらこうなってた。……シキ、お前は何ともないか?」
「……強いて言うなら、線が見えるんだ。お前にも、キリトにも、全部に線が書かれてる」
「線?」
キリトが訊いてくる。
「あぁ。何だか知らないが、黒い線が見える。そこら辺の建物にも見えるし、床にも見える。これは、一体……?」
「…………以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」
茅場が何やら言っていたらしく、そう言って、紅ローブは忽然と姿を消した。
空は元の澄んだ青を取り戻し、NPC達の陽気な演奏が遠くで流れている。
その下で、一万の人間が、騒ぎ出した。
悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。
様々な負の感情の伴った叫びが聞こえる。
「…………クライン、ちょっと来い」
「………………」
ボケっとしているクラインの腕を引き、キリトは足早に歩き出す。
「ほら、シキとシンも早くしろ」
キリトは振り向かないまま足を止めて言った。
二人は顔を見合わせて頷き、キリトに付いて行く。
狭い街路に停められた馬車の陰で止まった。
「……クライン」
真剣な声音のキリトに対し、クラインはまだ魂が抜けたような表情でいた。
「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。一緒に来い」
キリトの言葉に、クラインは眉をぴくりと動かした。
「細かい説明をする時間は無いし、何より面倒だ。でも、悪いことは言わない。俺と来い」
キリトの台詞にクラインはわずかに顔を歪めた。
「でもよ。前、言ったろ。俺、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらも、さっきの広場に
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