第壱話 《損傷した者》〜後編〜
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だよなキリト!?」
掠れた声で、赤髪の青年は叫ぶ。食い入るように見つめられた黒髪の青年、キリトは、しかし肯定も、かと言って否定もしなかった。
長い沈黙の後、キリトは口を開いた。
「…………原理的には、可能だ。でも、ハッタリだ。だって、いきなりナーヴギアの電源を落とせば、とてもじゃないが、そんな出力が出るはずない。大容量のバッテリーでも内蔵されてない……と……………」
キリトが絶句した理由を悟り、無意識の内にシキの口から乾いた笑みがこぼれた。
「内蔵、してるな。……はは、この為の内蔵バッテリーかよ……!」
茅場は皆の動揺などさておいて淡々と説明を再開する。
「更に具体的には、十分間の外部電源切断、二時間以上のネットワーク回線の切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解、破壊の試みのいずれかによって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は既に外部世界では当局及びマスコミを通して告知されている。……ちなみに、現時点でプレイヤーの家族友人等が警告を無視し、ナーヴギアの強制除装した例があり、その結果――――誠に残念ながら、二百三名のプレイヤーがこの城と現実世界から消失した」
どこかから、細い悲鳴が聞こえた。しかし、周囲の大多数のプレイヤーはその言葉を受け入れられないかのように放心したり、薄い笑みを浮かべたままだった。
シキの隣でキリトが数歩よろめき、よろめいた先にいたシンが受け止めた。赤髪の青年はと言うと、その場にドスンと尻餅をついて、
「信じねえ、信じねえぞ……」
などと嗄れた声をあげた。
「ただの脅しだろ。できるわきゃねえ。下らねえこと言ってないで、さっさとここから出せってんだ。いつまでもこんな茶番に付き合ってられるほど、こっちはヒマじゃねえんだ。イベントなんだろ、これは。オープニングの演出なんだろ。そんなんだろ」
赤髪の青年の言葉に、シキは何も言えなかった。
それは、この場にいる誰もが思っていることなのだろうし、真実を告げられるのは茅場だけなのだから。
「諸君が向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆる報道機関はこの状況を、多数の死者が出ていることも含めて繰り返し報道している。これによりナーヴギアが強引に外される可能性はほぼ皆無となった。今後、諸君の肉体はナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予の内に病院等に搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には安心してゲーム攻略に勤しんでもらいたい」
「なっ……………」
茅場がそこまで話した時、キリトが鋭い声を発した。
「ログアウト不可のこの状況で、ゲームを攻略しろだと!? こんなの、もうゲームじゃないだろうが!!」
茅場は、その声が聞こえたかのように、抑揚の薄い声で、しかしハッキリと告げる。
「しかし攻略には充分に留意してもらいたい。既にこの
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