第一物語・後半-日来独立編-
第三十一章 辰の地、戦火は走る《2》
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だよ! その時ぐらいは長だって生きたいと思った筈だ。だけどさあ、自分が生きていたら辰ノ大花が何されるか分かれねえから死ぬことを選んだんだよ」
理解出来るか?
「自分がしてしまったことが、地域全体の未来を左右することに繋がってしまった苦しみが。自分の命を犠牲にして死ななければ、大勢の者が苦しんでいまう。だけど死ぬことに恐怖する胸の締め付けが」
自分は何を言っているのだろう。
元を正せば、自分も長のことを理解出来ていなかったのに。
だが見てしまったのだ。長が苦しんでいる姿を。
自分がふざけてれば長が楽しめると思い、顔を出しに行った時。
この世から消えてしまう恐怖に震え、実之芽に抱かれて子どものように泣いていた長の姿を。
他人の苦しみは理解出来ない。
理解出来ないから他人を馬鹿に出来るし、貶すことも出来る。
しかし他人の苦しみに遭遇してしまったり、理解出来てしまった時。自分が如何に甘く生きていたことが分かる。
その内の一人が自分だ。
自分もそれなりの苦しみを得て、生きてきたつもりだった。が、それは結局“それなり”の苦しみでしかない。
地域の名を背負う長に比べたら、如何に自分がちっぽけな存在だか理解出来た。
きっと他人を馬鹿にする者、貶す者は相手のことを理解しようとしない。他人の苦しみを知ることを恐れ、自分は弱くないと思い込んでいる弱虫だろう。
荒れる戦場で、短くも長く感じる沈黙が流れた。
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