第一物語・後半-日来独立編-
第三十一章 辰の地、戦火は走る《2》
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らない」
『俺達の長を殺してでもか』
「はい、そうです。黄森と言うたった一地域、それだけで他国と渡り合える戦力を持っている。恐怖と言う誰もが脅える存在となることで、他国が戦争を仕掛けて来ないための抑止力となっているのです。
僕達の長を殺せば、例え神人族であろうとも容赦はしないぞ、と偵察に来ている二印加奈亜米|《トゥーエン・カナリカ》経由で世界に広まり、神州瑞穂の平和がまた続くのです」
この言葉に彼は拳を握り締め、思いを必死に抑えているのが拳の震えで解った。
今の彼は怒りで頭が熱くなっているに違いない。そのため冷静に物事を見れないのだ。
そう言うことなら、冷静にさせるには一度沸騰させた方がいい。
『……何なんだよお前はさあ』
聞こえた。
怒りで声に力が込もっている。それでいい。
『結局、お前が立てた戦術は長を殺すためのシナリオじゃねえかっ!』
溜め込んでいた思いを噴き出すように、大声で声を御茶丸に向かって飛ばした。
『お前は長を救おうとは思わねえのか! 長は死んで当たり前だって思ってんのか! ああ!? 俺は嫌だね。長であっても後輩だ、その後輩が自分の命を犠牲にするのが当然だって思ってる』
彼の声は止まらない。
『なんでだ! なんであんな弱い奴が、そんな重たい責任背負わねえといけねえんだよ! 俺達でいいだろ! 俺達でいいじゃねえか。なんで、なんでだよ……ふざけんなよ!』
映画面の向こうからこちらに反抗する表情、態度を向けている。
心配になった明子が近寄って来るが、手で来るなと指示を出す。
大きく一息。
こちらに向けられた彼の言葉を、もう一度思い返し深々と受け止める。
そして閉じた目を開き、彼に向かって、
「てめえに長の何が分かるってんだっ!!」
●
突如の大声に、彼の身体は反射的に強張った。
この声は明子にも、遠いが彼の周りにいた避難して来た住民にも届いた。
先程のような笑みに似た表情は消え、叱るような、怒鳴るにも似た感情が感じられる。
「なんで長が救いの手を差し伸べても死ぬことを選ぶのか、分かってんのか!」
『…………』
「長はな、守ろうとしてんだよ俺達を。自分が犠牲になれば黄森は辰ノ大花を支配下に置くが、条件として俺達の人生狂わせないでくれって頼み込んだんだよ。聞いただろ? 最後の約束を」
口からは声が出なかった。だから彼は黙って聞くしかなかった。
あんなに声を出した彼の、何時もふざけているイメージしかなかった覇王会戦術師の言葉を。
「泣いてただろ? 何でか分かるか?」
『分からない』
「自分がこんなにも愛されていたって、初めて気付いたからだよ! 竜神の血が流れてるから、唯一宿せる存在だからなんざ関係無く、単純に自分の死を悲しんでくれる人が大勢いたから
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