第一物語・後半-日来独立編-
第三十一章 辰の地、戦火は走る《2》
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花と黄森とでは相容れぬ立場のため、一度崩れたものを再び立て直すことは不可能です。そう、長を殺す側と殺される側が手を組んでしまった前からね」
「皆、本当は日来と一緒に奏鳴様を救いに行きたい。だけど、そうしたら、奏鳴様の最後の約束を破ることになってしまう」
彼女は自身の解放が確定的になってしまった時、辰ノ大花の皆にこう言ったのだ。
“私が死ぬということは、お前達が自由になることだ。別れは寂しいが、お前達は私が生きて得られなかった幸せを、その分得て、語り笑ってくれ。”
弱くも強くあろうとした少女の言葉は皆の胸に刺さり、誰もが自身の無力を痛感した。
戦場となった前方に見える遠い町を、視界に入れたまま思い出す。
「最後の約束とはよく言ったものです。……全く、泣いて言われたんじゃ、誰も破ることなんて出来ませんよ」
抗いなど自分からすれば容易いことだ。ただ相手に逆らい、従わなければいいだけのことだからだ。
しかし、長は泣いて言った。
“幸せを得て、語り笑ってくれ”と。自分の分まで。
家族を殺してしまい、黄森の者達までも殺してしまい辰ノ大花に迷惑を掛けてしまった彼女にとって、今までの生涯は何の価値の無いものだったのだろう。
そんな彼女と交わした最後の約束。
せめて、少しは生きていて良かったと、そう思っていてほしい。
「まだ生きていてもいいんだと、そう言ってあげたかったものです。ですが、僕達にそんな言葉を言う資格は無い。今まで苦しませ続けてきた僕達に出来ることは、彼女を早く楽にさせてあげることだけなのかもしれませんね」
「私、悔しいです。黄森が怖いからって理由で、奏鳴ちゃ……奏鳴様を死なせることが。……うう、わ、わだぢ……悔ぢい」
何も出来ない自分が悔しくて、瞳から溢れ落ちるものを必死に拭う。
拭い、拭い、また拭っても頬を流れるそれは止まらなかった。
「泣いては駄目ですよ。皆、泣かないように必死に堪えてるんです。堪えて、堪えて、堪え抜いて。もう彼女のような人を出さないようにするんです。この苦しみは、自分達が知っていればそれでいい」
「ずるいですよ、御茶丸君は。何時もふざけてるのに、ここぞとなったら格好いいんだから」
「自分的にはかなりイケメンだと思うんですよ」
言うと後ろから殴られた。
丁度、背骨周りの筋肉を殴られかなり痛む。
「やっぱり格好悪い」
「ははは、それは残念です。まあ、長が救われるのなら日来に奪われた方がいいんですね。そうなってもいいように、こちらも立場を示さねば」
口にしてはならない言葉を口にし、右手を素早く右へ振り払い映画面を表示する。
映るのはスーツを着た、騎神を操縦する者達だ。
男子三人。同じ宇天学勢院高等部三年生であり、時々話す程度の学勢仲間だ。
今はどうや
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