第118話 劉協の複雑な想い 前編
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前とゆっくり会話ができぬ」
劉協は私に椅子に座るように促しながら、私のために用意された椅子の対面に用意された椅子に腰をかけるのがわかりました。
「家臣である私はこのままで十分でございます」
「余が許すゆえ、椅子に座れ」
劉協は声を大きくして私に言いました。
彼女の声に少し怒りを感じた私は彼女が促すまま椅子に腰をかけました。
私が椅子に腰をかけるのを確認すると彼女は視線を宦官に向けました。
彼女の表情は感情のこもらない無表情でした。
「茶を用意せよ」
「畏まりました」
宦官は劉協の命に従い部屋を後にしました。
「劉ヨウ、州牧に任官されたそうじゃな。いつ都を去るのだ」
劉協は宦官去るのを確認すると私に声をかけてきました。
「一ヶ月以内には冀州へ向け出立すると思います」
「一ヶ月とな。都に来てまだ間もないのに冀州へまた戻るとは大変だな」
「家臣である私は陛下の御命に従うのが努めでございます」
「陛下に死ねと言われればお前は死ぬのか?」
「死にたくはありませんが死ぬしかないでしょう。私が陛下の命に従わず死ななければ私の縁者に類が及びます」
「家族のために死ぬというわけか」
「家族の犠牲という言葉は好きではありません。私はただ足掻くことが不可能であれば被害を最小限に治めたいだけです」
無表情であった劉協の表情は優しい表情に変わりました。
「私にも兄がいる。自分で言うのは何だが私と兄は母は違えど仲が良い。嫌な思いをすることがあるが兄や董太后がいれば気にならない。私は今の状態が良いと思っている」
劉協は私から視線を逸らし物悲しい表情をしていました。
私は何と言えばいいのでしょう。
ですが、これが劉協の置かれている現状なのでしょう。
兄を押しのけてまで皇帝になるつもりがないが、彼女の父である劉宏は彼女が皇帝につくことを望んでいる。
結果、彼女と兄の間で争いがなくとも周囲の者達が火種を持ち込んでしまい、彼女と兄の間に微妙な距離間が生まれてしまう。
兄である劉宏の母・何皇后は劉協のことを良く思っていないことでしょう。
直接の面識はありませんが何進の人なりを見るにそれほど酷いとは思えないですが、我が子のことになれば善人でも人が変わるといいますから何とも言えないです。
「そちには兄弟は居るのか?」
「姉が一人おります。現在は?州刺史として任地におります」
「姉弟揃って官吏として活躍しておるとは流石は二龍と呼ばれる程の秀才だな」
劉協は私と姉のことを調べているようです。
暗愚であれば謀殺のことなど考えずに済んだでしょうが英明であれば知恵が働く故に劉弁派に要らぬ警戒をされます。
「殿下が姉と私のことをお耳にされているとは光栄にございます。しかし、二龍と
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