第118話 劉協の複雑な想い 前編
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除くことはできません。それほどまでに漢は腐っているのです。漢の権威を一度地に落とし、大陸に乱を呼び込み民草に恐怖と怨嗟をもたらすのです。さすれば民草は自分達を救ってくれる大陸を統一する英雄を希求するようになります。その時、貴方様が大陸の覇者に一番近い場所に立つことになります。我らは乱世の到来を誰よりも早い段階で知り、冀州で力を蓄え準備は整っているのです。貴方様が望んだ通り、私は貴方様のために誰よりも早く天下を平定させてご覧に見せます」
揚羽は私の右掌を両手で覆い力強い眼で私の瞳を凝視しました。
私は彼女の強い想いにそれ以上何も言えませんでした。
揚羽の言葉は全て聞かずとも得心できています。
私が皇帝となり新たな枠組で一から組織を再編しなければ旧来の問題のある勢力を排除することはできません。
一番の問題は宦官です。
宦官は皇帝、皇帝の家族の身の回りを滞り無く行なうために必要不可欠な存在であることは理解しています。
問題は宦官に権力を持たせてしまう仕組みが出来てしまっているということです。
その仕組みは廃止できるのは皇帝のみですが、劉協や劉弁のような既存の王朝の皇帝では宦官の権力を完全に削ぐことは無理です。
漢の宮廷は士大夫層を中心にした清流派と宦官を中心にした濁流派との争いの歴史といえます。
宦官の権力を削げば宮廷争いが無くなるわけではありませんが、要らぬ宮廷争いの火種を無くすことができます。
漢の歴史を還り見れば宦官に権力を与えなければ凄惨な宮廷争いを未然に防ぐことが可能だったかもしれません。
絶対権力を持った皇帝が存在すれば新たな枠組みで理想の仕組みを実現できます。
それでも何れ仕組みは腐敗するでしょうが、何れ腐敗する仕組みだろうと私の望みは出来るだけ長く平安の世を実現できる仕組みを作ることなのです。
そのためには今の漢は滅んで貰わなければいけません。
私は揚羽に送り出され劉協の待つ董太后の宮殿に出向きました。
宮殿につくと宦官に劉協の書斎に案内され椅子へ座るように勧められましたが、椅子には座らず劉協が来るのを待つことにしました。
私が書斎に来て数十分後人の気配を感じ、部屋の入り口に目をやると私を案内した宦官が現れ入り口の横に立ちました。
「殿下のおなりにございます」
宦官が甲高い声で言いました。
私は其の声を効き部屋の端により片膝を着く格好で頭を伏せました。
衣を引きずるような音が私の近くまで来て止まりました。
「劉ヨウ、大義」
声の主は先日聞いた劉協の声でした。
「殿下、今日はお招きいただき感謝の極みにございます。殿下におかれましてもご健勝で執着至極にございます」
私は更に頭を下げ言いました。
「面を上げ、その椅子に腰をかけよ。それではお
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