第十一章 バカ新人と素直な新人
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完全に読みきった防御に隙を突いた反撃は脅威だ。
「キャロ、もう降参か?」
「いえ、もう少し頑張ります」
小さな女の子が頑張ると言えば年上のティアナさんとスバルさんは頑張らなければならないと思うだろうし、僕も女の子が頑張ると言うのであれば気力を出して踏ん張ろうと思う。
たぶん、そういった狙いがあるんだろうと思い、改めて尊敬する。
●
「さーて。今日はこれまで。各自疲れを残さないようにしっかりと休むように。休むのも立派な仕事だ」
その言葉に全員がへたり込む。
その中でもキャロ・ル・ルシエとエリオ・モンディアルはまだまだ子供だ。
だから、歩けそうにない二人を抱えて運んでやることにした。
「よっと、さぁ次は休憩だ……!」
「はーい」
子供は素直で良い。
「う、羨ましいなぁ」
「バカな事言ってないで写真! エリオとミウラ教導官の資料を盗撮《とる》わよ!」
ティアナとスバルが何か話していたようだが、離れていたのでよくわからなかった。
●
訓練後には汗を流す為にシャワーを浴びるのが常識である。
エリオ・モンディアルも普通にシャワーを浴びるのだが、今回はとある任務を任されていた。
「ちょっと、エリオ。頼みがあるんだけど聞いてくれる?」
その依頼主はティアナ・ランスターであった。
エリオ・モンディアルとティアナ・ランスターは今回の機動六課で初顔合わせであり、初訓練の前に多少の会話をした仲であった。
これから同僚として働く為、互いに仲良くするのは必要であるとエリオ・モンディアルは幼ながらに理解しており、ティアナ・ランスターの頼みごとを内容も聞かずに承諾してしまったのだ。
「いいですよ。ティアナさん」
その依頼内容は、男子シャワー室の撮影《とうさつ》であった。
もちろんティアナ・ランスターはそれが盗撮ではなく、訓練の一環とした行為であると説明をしたのだ。
「良い? あのミウラ教導官の隙を撮るのよ? それもバレないようにね? 人間の最大の隙ってやっぱり裸体になった時じゃない?」
つまりは、秘密訓練の内容はミウラ・ケイタの隙を相手にバレない様に納める事である。
エリオ・モンディアルはその事に疑問を抱くこと無くその依頼の内容の難しさを考えていた。
「訓練中は一切の隙がないミウラ教導官の隙を突いた撮影。それもバレない様に完璧にこなすとなると、相当の隠密行動が必要になりますね。つまり、これは隠密行動の訓練ですね? ティアナさん」
「え? あ、うん。そうよ。そうそう。そんな感じよ……」
ティアナ・ランスターは自分の嘘がまるっきり通じてさらに過大評価された事に多少の罪悪感を感じたのだが、それでも撮影されるであろう男性の裸体の魅惑には勝てなかったのだ。
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