第九十四話 雷鳴のカトレア
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歯を食いしばって死の恐怖をねじ伏せたキュルケは、胸元にしまったタクト状の杖を取り出して馬車の外に出て大声で叫んだ。
「その子に手を出させないわっ! かかってきなさい!」
キュルケは『ファイア・ボール』のスペルを唱え杖を振るう。
杖から放たれた火球が、一番手前に居たコボルト鬼を火達磨にした。
『ウガァ?』
数十ものモンスターの目が一斉にキュルケを捉える。
「上等よ、かかってらっしゃい!」
口では勇ましい事を言っても、キュルケもまだ13歳。
爛々と光る無数のモンスターの目に無意識に足が震えた。
『ファイア・ボール!』
キュルケは、再びファイア・ボールを唱え、モンスターにぶつける。
だが20近い数のモンスターには焼け石に水で、モンスターたちは赤ん坊からキュルケに目標を変えキュルケに近づいてきた。
「いいわよ。コッチ来なさい!」
キュルケは振り返って路地裏へ逃げ込む。
(私が囮になれば、あの赤ん坊も助かるかもしれないわね)
キュルケがモンスター達を惹き付けて遠くまで逃げれば、あの赤ん坊は助かるかもしれない。
本当は赤ん坊を連れて逃げ出したかったが、赤ん坊との距離が離れすぎていた為、こういう手を取らざるを得なかった。
全てのモンスターが食いついてキュルケを追い、キュルケは路地裏への逃げ込もうと暗い通路へ走ると、不運にも既に先客が居た。
「あっ!」
潜んでいた巨大な目玉のモンスター、『バグベアー』はパラライズ・アイでキュルケを睨みつけた。
突然、現れたバグベアーにキュルケはまともにパラライズ・アイを見てしまい、電撃の痺れとは違う、筋肉の痙攣が身体全体に回ったような感覚を受け、立っている事も出来なくなりその場に倒れこんだ。
「う、うう……」
パラライズ・アイで舌すらも痺れてしまい喋る事も出来なくなったキュルケ。
キュルケを追ってきたモンスターたちは、倒れたキュルケの柔らかい肉を求めて一斉にスピードを上げた。
(……あーあ。最後の最後にとんだヘマをしちゃったわね」
後悔は無い……といえば嘘になるが、もう少し人生を、恋を楽しみたかった。
と、半ば諦め、目を瞑って最後の時を待った。
「……」
パラライズ・アイで聴力にも支障が出たキュルケは、自分がどう食われるのか考えないように大人しくなった。
「……?」
いくら待っても、キュルケに圧し掛かったり、持ち上げる様子が見られない。
目を開けられる程度に回復したキュルケは、ゆっくりと目を開けると、20近く居たモンスター達が天から降り注ぐ白く細い『線』で蜂の巣にされる光景が目に入った。
(……雨?)
キュ
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