『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.03
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て治したんですか?」
「衰弱していたあなたに、私の魔力を分け与えたのよ」
当然の疑問に、返す答えはあっさりと。
だが、その内容はにわかには信じがたいものだった。
……今、この人は何を言ったんだ?
「えーと、冗談……ですよね?」
「いいえ、事実よ。 もっとも、あなたが私の眷属だったからこそできた荒技なのだけれど」
「ちなみに彼女は一晩中、君を抱きながら寝ていたんだよ。 生まれたままのその姿でね」
「……え?」
静止する思考。 遅れて言葉の意味を理解する。
抱きながら寝ていた? 生まれたままの姿で?
……な、なんですとーッ!?
裸の男女が同じベッドで抱き合っていたとは、つまり、その……なさったのでしょうか?
想像した情事に途端に顔が熱くなる。 ……え? マジで?
俺ってば、こんな形でチェリーを卒業しちゃったんですかッ!?
「ははっ、たいがい君も分かりやすいね。 うん、その表情をみていると何を考えているのかがよく分かる。
だが安心したまえ、君の貞操の無事はボクが保障しよう。 そうさ、間違いなく君は童貞のままだ」
童貞。
いつもなら重く圧し掛かるはずのその言葉に、今だけ俺は安堵した。
とりあえず、俺の愚息は今日に至るまで鉄の守りを貫いたらしい。
しかし、それはそれとして……魔力だったか。
ぺたぺたと、俺の両手が下腹部を撫で回す。
何もない。 ……正確には傷の痕跡を何一つ残さない、肌の色だけがそこに。
「不思議かしら? でも、あなたが知らないことなんて、この世界にはいくらでもあるのよ?」
そう言って、下着姿のリアス先輩が俺の方へと寄って来る。
頬を絡め取る細い指先、甘い吐息を感じるほどに二人の距離は間近へと。
肌が紅潮していく様子がイヤでも判る、だってこんなにも顔が熱い。
そして彼女はこう言った、その唇を震わせて。
「では、改めて自己紹介をさせてもらうわね。
私の名前はリアス・グレモリー。 悪魔のリアス・グレモリーよ」
―――悪魔。
およそ日常では聞き得ない単語が耳朶を撫でる。
「そして、これからは私があなたのご主人様よ」
彼女の告げたその言葉が部屋の静けさの中にいやに響いた。
きっと、おそらく。 このとき俺は運命というものを感じていた。
―――ご主人様。
―――リアス先輩が、俺の……ご主人様?
理解できない。
……いいや、理解できない言葉ではない。 少なくとも一つだけは。
リアス先輩のものなのだ、俺はもう。
俺はそれだけ理解して、朝の流れに身を任せた。
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