暁 〜小説投稿サイト〜
ハイスクールD×D 〜我は蟲触の担い手なれば〜
『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.03
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 混迷を極める俺に、けれども日常は無情にも足音を鳴らしてやってきた。

「イッセー!! いい加減に起きてきなさい!!」

 ドタドタと勢いよく、やや乱暴に口調を荒げて。
 階下から昇って来るのは、間違いなく母さんの気配だった。
 ふと、時計に目を向ければ、いつもならすでに朝食を食べている時間になってた。

「夜遅くまで友達と遊び呆けて、そのうえに遅刻だなんて絶対に許さないわよ!!」

 母さんが来る。 いつも通りに。 俺の部屋へと。
 ……待て。 待て、待て、待て、待て!!
 今はダメだ!! この場面を、この状況を、見られるのは非常にマズい!!

「待て、待ってくれっ!! 今、起きたから!!
 すぐに行くから今だけは来ないで、来ないでくださいっ!!」  

 パニックに陥る思考は、それでも不測の事態を回避しようと言い訳じみた言葉を吐き出す。
 けれど、それでも乱暴な足音は鳴り止まない。 刻一刻と、確実に俺の部屋へと迫ってくる。

「だあああああっ!! もうっ、来るなって言ってるのに!!」
「……うぅん、騒がしいわね。 なぁに、もう朝なの?」
「……っ!?」

 俺の隣で、寝ぼけたリアス先輩が目をさすりながら身を捩る。
 そして、ゆっくりと身を起こしきょろきょろと辺りを見回す。 ―――そのときだ。

「イッセーっ!!」

 ガチャリ、と。 咆哮する母さんの手によって、部屋の扉が勢いよく開け放たれる。
 その瞬間。
 俺の部屋の中で繰り広げられる光景が、憤怒に表情を歪ませる母さんに向かって、惜しげもなく曝け出された。

 ちち。 ちちちち。

 憤怒に歪んだ表情のまま、開け放たれた扉の前で母さんが静止した。
 ぼんやり揺れる空虚な視線は、先輩たちを交互に見ている。
 裸のリアス先輩に、地肌の上にYシャツだけを羽織った桐原先輩。
 ……ああ、そういえば俺も裸なんだったか?
 誤解もクソもない。 どう考えても事後でしかなかった。

「おはようございます、お母さま」
「お邪魔しています、小母さん」

 微笑む二人の先輩が、母さんに挨拶をする。
 しかし、返答は一切なかった。
 母さんは口をパクパクとさせながら、ただその光景を眺めている。

「……あの、母さん」

 俺の言葉に反応し、母さんの視線が俺を捉える。
 けれども先程まで憤怒一色に染まっていたはずの表情は、今では恐ろしいほどに無感動な顔をしていた。

「ハヤク、シタク、シナサイネ……」

 カタコトだった。
 調子はずれの機械音声のように、奇妙で、珍妙な音階でそれだけを言い残すと、母さんは部屋の扉を閉めてしまった。

「……どうしてこうなった」

 起きてしまった出来事を嘆きながら、俺は両
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