第三十一話 第七次イゼルローン要塞攻防戦
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に中佐が唇をかむ。クブルスリー司令長官は顔を強張らせている。本来なら撤退を宣言しても良い、それが出来ないのはやはり感情的に納得出来ないものが有るのだろう。参謀長が私に視線を向けた、やれやれだ、嫌な役目をしなくてはならない。
「撤退を進言します」
皆の視線が私を見た。睨むような厳しい視線の者、ホッとした様な視線の者、様々だ。
「イゼルローン要塞は外からの攻撃に対しては非常に堅牢です。攻略が成功する可能性は極めて小さいと言わざるを得ません。だからこそ、今回は内部から攻めようとした……。それが失敗した以上、残念ですが撤退するのが最善かと思います」
「……」
「今撤退すれば損害は殆どありません。しかし攻撃を実施すれば多大な損害を受ける事は必定です。要塞攻略が成功する見込みが立たない以上、損害は出来るだけ小さくすべきです」
嫌な役目だ、シェーンコップ大佐達を見殺しにしろと言っている。しかし戦闘を行えばその何千倍、何万倍の死傷者が出るだろう……。冷酷、非道と言われようと進言しなければならない。
「閣下、小官もヤン准将の意見に同意します。撤退するべきです」
グリーンヒル参謀長が私の意見に同意すると皆がクブルスリー司令長官を見た。司令長官が顔を強張らせた。集中する視線に圧迫感を感じているのだろう、艦橋の空気が嫌と言うほど緊迫した……。
「……撤退する」
絞り出す様な口調だった。不本意だったに違いない、だがクブルスリー司令長官は正しい選択をした。皆がそう思ったはずだ。艦橋の緊張はジワリと緩み彼方此方で息を吐く音が聞こえた。
帝国暦487年 7月 14日 ミューゼル艦隊旗艦 ブリュンヒルト ラインハルト・フォン・ミューゼル
オーディンから通信が入った。オーディンを発って未だ四日目だがイゼルローン要塞で何か有ったのか。反乱軍が要塞付近に居るようだという通信が先日有ったばかりだが大規模な攻撃でもかけてきたか……。スクリーンにブラウンシュバイク公の姿が映った。互いに敬礼を交わすと公が話しかけてきた。
『反乱軍がイゼルローン要塞に攻め寄せてきましたが撤退したそうです。先程イゼルローン方面軍司令部より連絡が有りました』
「撤退?」
攻め寄せて来て撤退? どういう事だ? 訳が分からずケスラー、キルヒアイスに視線を向けたが彼らも訝しげな表情をしている。連中、一体何を考えている?
『今回、彼らはイゼルローン要塞を内部から攻略しようと考えたようです』
「内部から?」
『ええ、帝国軍人に偽装した人間を軽巡航艦で要塞に送りこんだのですがリューネブルク中将に正体を見破られました。彼らはローゼンリッターだったのですよ』
なるほど、そういう事か。リューネブルク中将は元々は反乱軍でローゼンリッターの指揮官だったと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ