第三十一話 第七次イゼルローン要塞攻防戦
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もてなしてやれとね』
「馬鹿な……」
彼方此方で呻き声が聞こえた、驚愕、失望。こちらの作戦は読まれていた……。遅かった、やはり遅かった。イゼルローン方面軍司令部の設立とリューネブルク中将の配備はセットで行われた。ブラウンシュバイク公はこちらがイゼルローン要塞攻略を実施する事も要塞内部に人を送るであろう事も予測していた……。
『嘘ではありませんぞ、イゼルローン方面軍司令部の人事発令に小官の名は無かったはずです。理由はもうお分かりでしょう、小官の名が有れば当然ですが作戦は実施されないでしょうからな。誘き寄せるために敢えて伏せたわけです』
「……」
『軽巡航艦が現れた時は余りに予測通りなので可笑しくなりましたよ。もう少しで噴き出すところでしたな』
リューネブルク中将が声を上げて笑う。また艦橋の彼方此方で呻き声が聞こえた。今度は屈辱、憤怒……。
「……愚弄するのか、我々を!」
押し殺した声に怒りが籠っていた。クブルスリー司令長官が屈辱に震えている。司令長官になって最初の軍事行動なのだ。作戦にも自信は有った、イゼルローン要塞を落せるのではないかと期待も有ったはずだ。それが失敗し嘲笑されている……。
『いや、感謝しているのです。楽しませてもらったと。ここは娯楽が少ないのですよ。御礼に一つ忠告しましょう。帝国軍の増援部隊、四個艦隊がイゼルローン要塞に向かっています。彼らが到着する前に撤退するのですな。伝えましたぞ、では失礼』
スクリーンの映像が切れた……。
皆が顔を見合わせている、艦橋には重苦しい空気が漂った。増援部隊四個艦隊がイゼルローン要塞に近付いている。おそらくは最低でも五万隻を超える大軍だろう。駐留艦隊と合流すれば六万隻を超える大軍になるはずだ、こちらは三個艦隊、司令長官の直率部隊を入れても五万隻……。
「はったりだ! 本当に増援部隊が近付いているのならむしろ伏せるはずだ。司令長官閣下、イゼルローン要塞を攻略しましょう」
フォーク中佐だ、頬が引き攣っている。フォーク中佐は同意を求めるかのように周囲を見たが誰も視線を合わせようとしない。
彼の言う通り、増援部隊が来るのがはったりなら良い。しかしもし増援が事実なら同盟軍は窮地に陥る事になる。
「敢えてこちらを留まらせるために言った可能性もあるだろう、増援部隊が近くまで来ている可能性は否定できない……」
苦渋に満ちた声で中佐を抑えたのはグリーンヒル参謀長だった。そうなのだ、確かにその可能性は有る、相手はこちらの動きを想定していた事を忘れてはならない。
「しかし、このままでは……」
「それに攻略と言っても単純な力攻めで落せるようなものではない。その事は皆が分かっているはずだ」
グリーンヒル参謀長がなおも要塞攻略を迫るフォーク中佐を窘めた。悔しそう
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