黄巾の章
第8話 「……ナンデモナイヨー」
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……土壌がいいから木々が生い茂っとるんやね。でも、禿げてないっちゅうことは……」
「そうだ。木が乾燥していないから薪に使えない。だから木々が残っている」
……なんてこった。
それじゃあ火を使っても、大した火事にならないということか。
火で炙り出すことができないんじゃ……正攻法しかないということか?
「まずい、まずいっちゅうねん……どうしようもないんか?」
霞の表情が絶望といった様子になる。
周囲の桃香や愛紗も同様だ。
鈴々は……あんまり悩んでいないな?
……でも、考えがあるようには見えない。
「ふむ。とりあえず……朱里、雛里。二人の所見を述べよ」
「「御意」」
盾二は、朱里と雛里に視線を向けると、二人はしばし黙考して駒を動かした。
「無理に火で砦を焼く必要はないと思います。夜襲という手もありますし、山を包囲して糧食攻めにする手もあります」
「ただ、現在相手の総数が把握できていません。霞さんたちが戦った相手は、およそ一万五千と聞いていますが……全部隊とも思えません」
「その場合、義勇軍が一万、霞さんの部隊が五千ですと……圧倒的に兵力差で負けます。ですので、砦攻めは現状では難しいかもしれません」
……うん。
朱里と雛里、確かに軍師だな。
こんな状況を的確に把握できるなんて、あたしには無理だ。
「朱里ちゃん……私なら周辺の黄巾さんを集めて糧食攻めにしたいけど……」
「いい考えだけど、今だとどうかなあ。官軍に勝ったことで、勝気が増しているから打って出てきちゃうかも。そうしたら兵力差で被害は大きいよ?」
「偽兵の計とかどうかな?」
「うーん……こちらの糧食に問題はないけど、だからといって数ヶ月もかけると今後の行動にも問題にならない?」
「やっぱり削るしかない?」
「うーん……」
朱里と雛里が悩みながら話し込んでいる。
その間、盾二は微笑ましい眼でその様子を見ている。
まるで教師のようだ。
「なあ、盾二?」
「ん? なんだい、翠」
「あんたは、策があるのか? なんか腹案があるって顔をしてるけど」
あたしの言葉に、朱里と雛里が顔を上げる。
「あるにはあるけど……俺は攻勢じゃあんまり役に立たないしな。策の基本は軍師が考えるもんだ。なんでも主がやっちゃ、臣が育たないからね。まずは献策をさせることが肝要なんだよ」
「そ、そうか。二人は盾二の臣だったな……」
なるほど。
つまりは信頼しているってことか……
あたしの言外の意味に、朱里と雛里がぱぁっと顔を綻ばせる。
「だが、まあ策が決まりきらないなら、俺からいくつか戦法を提案してみようか。それを取り入れるかどうかは、朱里と雛里に一任する」
「戦法、ですか?」
「ああ
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