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されど、我らが日々
第二章
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の自死。2、口外すること。3、年内の辞職。なお、読後このメモの焼却を命じる」
2、3回咳き込んで、麗人はくすくす笑った。泣きながら。
「笑っちゃうでしょ、そんな遺言」
「……いや」
麗人はしばらく、空になった缶を手の平で弄びながら、何かを考えていた。俺は俺で、麗人の細くて飾り気のない指先を眺めて、考え事をしていた。

――死んだ上司との不倫関係か?

気になる。すげぇ気になる。しかし無理しなくていいと言った手前、この話で一番の地雷原に踏み込むわけにはいくまい。
「尊敬、してたんだな、その人を」
結局、無難に話をふってみた。
「尊敬…そうですね。尊敬も、してたかもしれません。でもね」
もう一缶、手を伸ばすと、麗人はふぅ…と息をついた。
「放っておけなかったんです。私は」
――無理してるひとが分かるんです。そう言って麗人は上目遣いにじっと俺を見た。
「……お?」
「あなたは…そうでもないかんじです…ね」
そして目を伏せて微笑んだ。…なんという睫毛の長さか。明かりの下で見ても、充分長い。
「面倒見がよくて、そのせいでちょくちょく厄介事に巻き込まれたり、損をしたりするでしょう。…でもそれは全部、素のあなたで、変えようがない『自分』そのもので…」
もう酔いが回ってきたのか、少し饒舌になってきたようだ。…俺を今まさに、厄介事に巻き込んでいる当人に言われたくないことだが。…まぁ、いい。
「その人は、そうではなかった…と」
「…本当は、気が優しい人なんです。でも、立場が許さなかった」
ふいと顔を上げて、窓の外を見ている。見るものなんざ月くらいしかない、殺風景な下宿の裏庭だが。
「自分らしくある、ことを。…本当の自分じゃどうにもならないから、嘘の自分を作り上げて、塗り固めていくしかなかったんだと、思うんです」
「……はぁ」
気の抜けたような相槌しか打てなかった。気を悪くしていなければよいが。
彼女が傭兵なのか検死官なのかOLなのか知らないが、どれであるにしろ『仕事』だ。俺は、バイト以上の仕事を知らない。しっくりこなければ辞めればいいから、人格変更しなけりゃならない必要性まで感じたことがないのだ。
「みんな、勝手なんです」
かつん、と軽い音を立てて、卓袱台に缶が叩きつけられた。…おぉ、もう3本目が空いたのか、麗人よ。
「会社のピンチを見てみぬフリして、自分が貧乏くじ引くのイヤで、誰かがやってくれるのを待ってて。上層部だって、そんな調子だった。…だからあのひとは1人で…会社を守るために、薄氷を踏むような危険なやりとりを続けたんです。そりゃ、褒められたことじゃなかったと思います。でも…みんなよってたかってあのひとにばかり汚れ仕事を押し付けて…ほかに、どんなやりようがあったっていうんですか!」
悲鳴に近い声で叫んで、麗人は顔
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