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問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜MEMORY〜
〜3〜
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ないので黒ウサギに掴まってください。一気に走ります!」

「わかったわ」

 女性が黒ウサギに掴まると、黒ウサギは緊張した表情のままトリトニス大河を目指して走り出す。

 眼前が開け、僅か数瞬後には森を抜けて大河の岸辺に出た。

「この辺りのはず・・・・・・」

「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色。そして、その女誰?」

 背後からあの忌々ましい問題児の声が聞こえる。どうやら十六夜は無事だったらしい。

 黒ウサギの胸中に沸き上がる安堵、は全くない。散々振り回された黒ウサギの胸中は限界だった。努髪天を衝くような怒りを込めて勢いよく振り返る。

「もう、一体何処まで来ているんですか!?」

「“世界の果て”まで来ているんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ」

 十六夜の小憎たらしい笑顔も健在だ。心配は不要だったらしく、何処にも傷はない。

「しかしいい脚だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかった」

「むっ、当然です。黒ウサギは“箱庭の貴族”と優秀な貴種です。その黒ウサギが」

 アレ?と黒ウサギは首を傾げる。

(黒ウサギが・・・・・・半刻以上もの時間、追いつけなかった・・・・・・?)

 この箱庭の世界でウサギは創始者の眷属である。

 その駆ける姿は疾風より速く、その力は生半可な修羅神仏では手が出せない程だ。

 その黒ウサギに気づかれることなく姿を消したことも、追いつけなかったことも、思い返せば人間とは思えない身体能力だった。

「ま、まあ、それはともかく!十六夜さんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」

「水神?―――ああ、アレのことか?」

 え?と黒ウサギは硬直する。十六夜が指さしたのは川面にうっすらと浮かぶ白くて長いモノだ。黒ウサギが理解する前にその巨体が鎌首を起こし、

『まだ・・・・・・まだ試練は終わってないぞ、小僧!!』

「大きいわね」

 黒髪の女性は感心したように呟く。

 十六夜の指したそれは―――身の丈三十尺強はある巨躯の大蛇だった。間違いなくこの一帯を仕切る水神の眷属だ。

「蛇神・・・・・・!ってどうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」

 ケラケラと笑う十六夜は事の顛末を話す。

「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。俺を試せるかどうか試させてもらったのさ。結果はまあ、残念な奴だったが」

『貴様・・・・・・付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』

 蛇神の甲高い咆哮が響き、牙と瞳を光らせる。巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。

 黒ウサギが周囲を見れば、戦
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