第一話、時の庭園
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「うん!私、頑張るよ」
ニッコリ微笑んで拳を握るフェイトにリニスは優しい笑みを浮かべた。
しかし、そのフェイトの表情が怪訝なものになり、彼女は疑問符を浮かべた。
「どうかしましたか?」
リニスに言われ、フェイトはゆっくりとリニスの背後の茂みを指差した。
「あれ、なんだろう……手、かな?」
「手?あ、ちょっフェイト!」
リニスに質問をさせる間もなく、どこにそんな体力が残っているのか、フェイトは自分が指差した茂みへと駆け出していた。ため息をついて、リニスもフェイトの後を追った。
「やっぱり、誰かいる!」
「っ、フェイト、引っ張るのを手伝ってください」
「ひ、引っ張るの?」
得体が知れないとはいえ、地面に手が投げ出されているということは明らかに倒れているということだ。倒れている人を引っ張るのは、少し気が引けるフェイトだったが、リニスは首を振った。
「この奥は深い森になっているので、中に入っていくのは今は危険です。それに、天然な迷路でもありますから」
確かに、もう時刻は午後の五時を過ぎており、そろそろ日が落ちてきている。暗闇の中で、森を移動するのはかなり危険なことになる。
以上の理由があり、仕方ないとフェイトは自分を無理やり納得させ、茂みからはみ出している手を握った。
「せーの……」
「「えいっ」」
リニスと息を合わせて、力いっぱいに引き抜く。すると、フェイトの予想外に簡単に手の持ち主は茂みから抜き出た。そう、予想外に。
それはリニスも例外ではなかったらしく、軽く肉体強化魔法も使っていたため、そう、軽く投げ飛ばしてしまったのだ。
「「………あ」」
これは、目が覚めたら謝らなくちゃダメだよね、と考えつつ、フェイトは大急ぎで墜落した場所に駆け寄った。
「子供…だよね…」
フェイトが辿りついた場所に倒れていたのは、自分より少し年下のような、綺麗な青髪を持つ少年だった。
「と、とりあえず持ち帰りましょう。投げ飛ばしてしまいましたので、流石に手当をしないと……」
予想外の事態にテンパっている珍しい家庭教師の様子を見て、フェイトは笑みを浮かべながら頷いた。
ーー暗い、暗い世界。希望もない、絶望すらない、なにもない無機質な空間に、俺は寝転がっていた。
俺はなぜここにいるのだろう。確か、俺は……あれ?…お、れは…なにを、していたんだ?
思い出せない。まるで自分の記憶がある時期から抜け落ちてしまっているかのように。
名前は分かる。それに、魔法の使い方も。そして俺が、どんな存在なのかも。でも、なぜ俺がこんなところに1人でいるのか、それだけが分からない。
ーー1人ーー
それが意味する悲しさ、寂しさを
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