第二部まつりごとの季節
第三十八話 日常の終わり、軍人として
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みを浮かべて老人が若人に問う。
「申し訳ありません」
赤面して背筋を伸ばした孫に豊長は重々しい口調で尋ねた。
「行くのが惜しいか?帰ってきたいか?」
「――はい」
「それでいい。帰ってこようと欲を出せ。他の家はどうか知らぬが、儂はそうしてきた。
お前もそれで良いのだ――故にこそ、この家を背負えるのだからな。帰ってこい、我が孫よ」
「―――はい、殿様」
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五月 二十二日 午前第九刻前 敦原駐屯地
独立混成第十四聯隊 首席幕僚兼聯隊長代理 大辺秀高少佐
――さて、間も無く新任の連隊長が着任する。
今まで聯隊長の代理として編成途中の庶務を取り仕切っていた大辺はようやっと頭が座る事に安堵の溜息をついた。
駒州軍司令官肝煎りの部隊だけあって、補給、動員は迅速なものであり、銃兵部隊と剣虎兵部隊はほぼ完全に充足している。連隊長もようやく27と家門を割り引いても若過ぎるのだが、それを押し通す実績がある。
経験が足りないところは幕僚が支えればどうにかなるだろうと大辺は評価していた。
「・・・・・・代理殿。」
聯隊本部剣虎兵幕僚を任じられた秋山大尉が話しかけてきた。
「何だね?」
「代理殿は、軍監本部にいらっしゃったと聞いているのですが?」
如何にも野戦慣れした衆民将校の秋山大尉と帷幕院を若くして卒業している典型的な秀才参謀である大辺が並ぶといかにも寄せ集めといった光景となる。
「あぁ、此処三年ほどは戦務課に居た。聯隊長殿にお前も前線の空気を吸えと引きずり出されたのさ」
「それはまた。えぇーそれで連隊長殿とは?」
秋山が苦笑して再び尋ねてきた。
「まぁ、長い付き合いではある。東州で父が死んでから馬堂家には良くしていただいているからな」
衛兵詰所から人が動くのが見えた。
「それでは聯隊長殿の事も?」
「あぁ、確かに良く知っているよ。だからこそここに居るようなものだ。
――そう心配するような相手じゃない。」
「ですね。私も北領で聯隊長殿と御一緒しましたが、良く頭もまわる方でした」と聯隊副官として配属された米山大尉が云った。彼は第十一大隊で兵站を取り仕切っていた男である。
「ほう、その時は龍州で匪賊狩りの最中だった――とどうやら到着したようだな」
秋山大尉が営庭に目をやりながら発した言葉に二人の幕僚も頷いた。
「あぁ、ようやく聯隊長殿の着任だ。それでは」
「えぇ、また後ほど」
同日 午前第九刻 敦原駐屯地 営庭
独立混成第十四聯隊 連隊長 馬堂豊久
馬堂豊久聯隊長は上機嫌に懐かしい顔の衛兵司令に話しかけている
「西田か、衛兵司令とは熱心な事だな。娑婆から戻った気分はどうだ?」
「色々と有難味が湧いてきますね――娑婆の」
北領で共に散
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