第百二十二話 蘭奢待その十四
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「その通りじゃ」
「それがしの鍛錬ですが」
本多からその話をする。
「殿のことを考えていまして」
「殿か」
「はい、殿をお護りする為のものです」
それが彼の槍だというのだ。
「それ以外の何でもありませぬ」
「そうだというのじゃな」
「はい」
本多の返答はぶれない。
「左様です」
「ではその槍で殿の窮地をか」
「お助けしていきます」
淀みのない声での返答だった。
「例え何があろうとも」
「そうじゃな、そしてそれは」
「井伊殿もですな」
「何があろうとも」
井伊も言う。
「殿をお護りする所存じゃ」
「武田がいますが」
徳川家にとって最大の脅威となっている。今徳川家は東の駿河、北の信濃をこの家に完全に押さえられているのだ。
「その武田が来ても」
「引かぬ」
決してだというのだ。
「この命にかえてもな」
「ですな。徳川の家臣ならば」
「我等の殿はお一人よ」
「はい」
「徳川家康様だけじゃ」
井伊は確かな声で言い切る。
「その他の誰でもないわ」
「それは徳川の者なら誰でもですな」
「当家は小さい」
それこそ織田や武田と比べるとかなりだ、比較にもならない。
「五十万石、それに家臣の数も少ない」
「はい、確かに」
「しかし一つにまとまっておる」
それが徳川家だ、そのまとまりのよさは他の家と比べても比較にならない程だ。
「殿の下にな」
「それがしもどの方も」
「忠義を競い合う程じゃ」
そこまで忠誠心の高い者ばかりであるのが徳川家d、代々仕えておりそれがさらに強いものになっているのだ。
本多の槍が動く、今度は縦横に振るがそれもだった。
井伊は防ぐ、その中で今度はこう言う。
「御主の槍ならば」
「それがしの槍ならですか」
「真田幸村の二本槍にも対することが出来るな」
「双槍将と呼ばれていますな」
水滸伝から来ている、董平という猛者の通称が幸村にそのまま与えられているのだ。
「水滸伝の好漢のままの強さですか」
「まさにな」
「そしてその真田幸村にそれがしが」
「勝てるやもな」
こう言うのだ。
「少なくとも互角に渡り合えるな」
「ですか」
「武田との戦の時は頼むぞ」
「武田とは何時か」
「そうなるやもな」
戦になる可能性は否定出来なかった。
「何しろ武田もな」
「天下を目指していますな」
「織田殿とそれは同じ」
「さすれば」
「やがて上洛してくるやもな」
そうなるのではないかというのだ。
「そしてその時は」
「我等は織田殿の盟友として」
「武田と一戦交えるやも知れぬ」
「そしてその武田に」
「あの者がおる」
その真田幸村がだというのだ。
「まさに智勇兼備のな」
「凄き者が」
「わしでもあの
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