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シャンヴリルの黒猫
49話「第二次予選 (2)」
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「……5、4、3、2、1、始め!」

 声と共に、剣戟の音がけたたましく鳴り始めた。まずは近場の者の首を(殺すわけではないが)取りにいったのだ。
 事前に何か取り決めていたのだろうか、Bランカーと思われる者相手に3人で連携をとって戦っている者もいる。
 逆に、Bランカー同士が一時的にチームを組んで、他の選手をバッタバッタとなぎ倒していくのも見られた。

 ようするに最後の10人に自分が入ればいいのだから、数で攻めるのも策の1つなのである。
 映像転送魔道具はそれらをまんべんなく上空から映し出し、会場へ転送する。ファイザルの町は大いに沸き立っていた。

「あっアッシュ!」

 目を皿のようにして黒髪の男を探していたユーゼリアが、声をあげる。彼は結界に背を預け、腕組みをして目を瞑っていた。

「馬鹿、そんなことしてたら…」

 今も、彼の目の前で2人の選手が太刀合っている。彼はその様子をぼーっと見ているだけだ。乱入して漁夫の利を狙うこともなければ、そこから逃げようともしない。
 会場の何人かも、それに気づいたらしい。司会者モナが彼らの気持ちを代弁するように言った。

『おや!? あの赤グループの黒髪の選手、先ほどから全く戦闘に参加していませんねえ! どうしたのでしょうか!?』

 解説者カエンヌが意味深に笑った。

『ほう』

『それにずっとああして無防備に立っているのに、誰からも相手にされていないようですが!? カエンヌさん、どういうことでしょう!?』

 ハイテンションのままカエンヌに訊くと、Sランカーはゆっくりと口を開いた。

『そうですね、まず1つ訂正しなくてはいけないのは、彼が周りから放置されているんではない。彼が(・・)相手にしていないのです』

『と、言いますと…?』

『私達はこうして上空から映像として送られてくるものを見ているだけですが、実際結界内では限られた狭い空間で、あちこちで戦闘が起きている。そこに彼は目を付けたのです』

 相変わらずアシュレイはその場を1歩も動かない。

『その場にいなければ確信は持てませんが、恐らく、彼は気配を操ってあの場に佇んでいる』

『気配を、操る?』

『言うのは簡単ですし、実際Cランク以上ともなればある程度はそういう事もできるようになります。“気配を殺す”という言葉は聞いたことありますか? 例えば静かな森の中で魔獣を相手にする時などは、その能力が無いとお話になりません。が、冒険者たちが一般にその能力を使うのは、今挙げた例のような、“静かな場所で、気配を「殺す」こと”が殆どです』

『確かに、その表現ならよく耳にしますね』

 今や観客の眼はアシュレイに釘付けだ。あれだけ騒がしかった会場も、とりあえず叫ばなくても隣の者に
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