§34 撃墜されても死亡フラグになりはしない
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憶操作が非常に手間になりそうだが。全員の記憶を矛盾なく、自然に修正するというのは非常に難度が高く面倒くさい。
「そうですよ。そろそろ深夜なんですから周囲の迷惑にならないようにしてくださいね」
しっかりエルに釘を刺され、黎斗は軽く謝りつつ目を閉じようとして―――
「やっぱ違う!! この気配は――!?」
「マスターうるさ……!?」
悲鳴を上げる黎斗に迷惑そうな目を向けたエルや乗客は、直後異常な事態に気付く。機内の電源が一斉に落ちた。次いで、振動。カンピオーネの野生の勘とかそれ以前の問題でヤバいことがわかる。
「―――!!」
連鎖的に挙がるのは悲鳴にすらならない悲鳴の数々。空中を落ちていく牢獄は、一瞬にして阿鼻叫喚の渦に叩きこまれた。
「まずいか!?」
地表まで何mかはわからないが、乗客全員を救出しようとすると普通にやっては一人では十中八九無理だろう。見捨てるのは目覚めが悪いし、権能は温存しておきたかったのだけれどしょうがない。非常事態だ。
「歪め。我が名の下に刻を示さん」
周囲がスローモーションになる。否、黎斗の時間軸のみが超加速する。加速する時間の中で自分の影を倉庫と繋ぐ。まずは、エルを押し込んで入れた。
「ちょっと入っててな」
加速している黎斗の言を、もちろんその言葉をエルが理解することは無い。今の黎斗を認識できるものなどこの機内には存在しない。
「よっ」
強引に影内部にエルを投入する。まず、倉庫番を入手だ。民間人を逐次投入していくことにするのだが、時間加速が解除された時に一般人を上手にエルが誤魔化してくれることを期待する。
「次は、民間人ズだね」
旅客機内を、駆ける。一人一人に手刀を叩き込み、あるいは道術で意識を落とし。それらを影に投げ入れ続ける。個人荷物も同時に入れることを忘れない。幽世に送り込むことは一般人にとって致命傷なので、一人一人の身体に守りの呪法も刻み込む。耳なし芳一のように、全身に呪力のルーン文字を書き込むのだ。仕上げに四大天使の結界を張ってワイヤーで縛る。これを乗客回数分繰り返すのは流石の黎斗も時間がかかった。時間加速していなければ、まず墜落前に終わらせることは出来なかっただろう。
「時間外労働に残業手当欲しいわあぁもう」
一人でぶつくさと文句を言いながら作業を続ける。もっとも「好きでコレやってるんでしょ?」と言われたらハイその通りですとしか答えられないのだけれど。自分(とエル)だけなら権能なくても問題なく逃げられた訳だし。第一残念なことに、残業手当を請求しようにも請求先はどこにもない。黎斗が所属している組織は学校と福祉施設くらいだ。どちらにしてもこんなことを請求するのはお門違いと言うほかは無い。
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