第19話 有希の初陣
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の気が散じるまで時間を掛けて封じて置くのが普通です。
そう。退魔師の仕事は魔物を倒したら終わり、……と言う類の仕事では有りません。基本的には、こうやって荒ぶる魂を鎮め直したり、邪気を抜いたりする事に因って彼らを本来の有るべき姿に戻したり、本来、彼らが存在していた世界に帰してやる事が仕事。
故に退魔師。ただ、最近は、倒魔師の数が増えて来る事に因って、本来の役目。世界の陰陽の均衡を保つと言う役目の方が疎かになって来ては居るのですが……。
尚、倒魔師の仕事は、異界の生命体を狩り出し屠るのが仕事です。そして、その行為故に、新たな恨みなどの陰の気を撒き散らし……。
彼らの存在が、更に悪い気の澱みを作り上げて居る可能性も少なくはないのですが……。
ただ、古来よりの方法。鎮めたり、清めたりするような方法では時代の流れについて行けない部分も有り、まして、東洋系以外の完全に負の部分しか持ち得ない悪魔の類も多く、そしてそいつ等が日本に侵入して来るようにも成ったので……。
日本の魔や神には、すべて和魂。人に対して優しく包み込んでくれる側面と、
天変地異を引き起こし、病を流行らせ、人の心を荒廃させて争いへと駆り立てる荒魂の、ふたつの側面が存在しているのですが、西洋系の魔物には、そのような側面を持たないモノも数多く存在しますから。
名づけざられし者や、門にして鍵などに代表されるクトゥルフ神話の邪神はその典型的な例でしょうね。
音声結界により、外界から切り離された空間内を満たしていた笛の音が、少なくない余韻と共に終了した。
後に残るのは、公園のベンチに横たえられた気を失った少女をどうするか、だけですか。
その少女。近くに住む少女なのか、学生服姿に長めの黒髪。まつ毛も長く、少し古風な……と表現される顔立ちですが、それでも充分過ぎるぐらいの美少女なのは間違いないでしょう。
所詮は推測に過ぎないのですが、本日は土曜日で、それでもこの夜の時間まで学生服姿でうろついて居たと言う事は、塾か、もしくは学校の部活動関係の活動の為に遅くまで掛かって、この異界化現象に巻き込まれたと言う事ですか、この黒髪ロングの少女は。
「この娘。一体、何処の、何と言う名前の女の子なんやろうか」
未だ目覚めようとしない、その美少女を覗き込みながら、独り言に等しい呟きを漏らす俺。
まして、流石にこんなトコロに放り出して行く訳にも行きませんし、そうかと言って、見ず知らずの俺が傍に居るのも……。痴漢か何かと思われる可能性も少なくは有りません。
「弓月桜。現在は東中学の三年生。この四月より、市内の北高校に進学予定」
そんな俺に対して、無味乾燥。非常に彼女らしい簡潔な答えを返して来る有希。
もっと
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