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ヴァレンタインから一週間
第19話 有希の初陣
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 故に、

 俺と有希を、巨大な白骨の左手が完全に捉えたと思った刹那、俺達二人の目の前に光り輝く魔術回路……結界用の防御魔法陣が顕われ、
 俺達を虚ろな眼窩で見つめていた巨大な髑髏から、怨嗟の籠った視線と、それ以上の呪いの籠った声なき絶叫が響き渡った。

 そう。如何なる物理攻撃も一度だけ反射する呪符が施されて居る以上、俺と有希を攻撃する事は、自らを攻撃する事と成るのは必定。

「助っ人、参上。……と言う感じかな」

 俺は、さつきに軽口風に伝えた後、有希を腕から解放。そして、

 軽くその場でターンをした瞬間、右手に顕われた七星の宝刀で、今度は俺を掴もうとした巨大な白骨の右手が振り下ろされる瞬間に、撥ね上げて仕舞った。
 それは、余裕を持った、更に、相手の動きを予想した行動。

「誰も、助けてくれ、などと頼んではいない!」

 その巨大な白骨製の右腕が撥ね上げられた瞬間、俺の左横を走り抜ける黒い影。
 長いコートの裾をはためかせ宙に舞う姿は魔鳥か、それとも、地に舞い降りようとする天女の姿か。

 さつきの霊気に反応する毛抜き形蕨手刀(わらびでとう)が、異界化した空間を紅蓮の炎で焦がしながら、逆袈裟懸けの形で巨大な白骨により形作られた異世界の生命体を斬り上げる!

 再びの咆哮!

 しかし、その咆哮が終わるその前に、最高到達点で一瞬、滞空したさつきが重力の法則に従い真下へと加速された炎に因る斬撃が更に一閃!
 咆哮を上げるかのように開かれた、歯根のむき出しと成った髑髏のちょうど中心に紅き断線が走る。

 そして……。

 そして、彼女が地上へと降り立った瞬間。

 紅き断線から広がって行く炎に、巨大な白骨の身体がゆっくりと崩れ落ちて行った。


☆★☆★☆


 俺の笛の音が、修復された祠と、其処に封じられ、そして何者かに因って解き放たれ、荒魂と成って暴れていた御霊を、再び鎮め、そうして、封じて行く。
 俺の右隣には荒ぶる魂を鎮める場に相応しい透明な表情の女神が。
 そして俺を挟んだその反対側には、二尺八寸の太刀を佩き(はき)、黒のロングコートを風に流した少女が、静かに佇んで居た。



 尚、今夜、この場に顕われたのは、おそらくは『がしゃどくろ』と呼ばれる幽鬼の類だと思いますね。
 夜間にガチャガチャと言う音をさせながら街を彷徨い歩き、生きて居る人間を見つけると襲い掛かって、握り潰したり、食い殺したりする、と言われている日本の妖怪。

 こいつらは、埋葬されずに亡くなった人々の無念の思いや怨念が凝り固まって出来上がった精神体。つまり、この人間界が産み出した(アヤカシ)の類ですから、返すべき世界は存在せず、こうやって、祠などに祭ってその恨みや呪いなどの陰
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