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ヴァレンタインから一週間
第19話 有希の初陣
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この手の幽鬼と言う存在は。

 刹那、有希が良く聞き取る事の出来ない、言葉とも、呪文とも付かない音を高速で紡ぎ出した。
 これは、呪文の高速詠唱にも似た様相を伴い、俺と有希の周囲に、彼女の集めた呪が渦を巻く。

 そして、その一瞬後、俺の周囲を水の気が、俺達を中心に上空へとうねりながら昇って行き……。
 そして!

 轟音と光が同時に世界を包み、走る電の柱が、大地から、宙に浮かぶ髑髏を貫く。

 これは俺の知識から言うと水生木。水の気を集め、雷を呼んだと言う事。
 もっとも、自然現象としての雷をこんな地表付近で発生させる事が可能だとは思いませんでしたが……。

 自然現象の雷は、そもそも、上昇気流と積乱雲が必要だったと思うのですが。
 確かに、水の気が下から上に動いて居たのは認めますが……。

 ただ、彼女は、先ほども俺が用いる結界術の如き不可視の壁のような物で、髑髏の群れの攻撃から俺達を護る事が出来たのですから、自然現象としての雷を操る事など造作もないと言う事なのでしょうか。
 未来を知って居る事と言い、彼女……情報統合思念体作製の、対有機生命体接触用人型端末の能力と言う物も侮る事は出来ないと言う事ですか。

「そうしたら、攻撃は有希に任せて、俺は、この異界化現象の核の発見に全力を挙げる」

 何にしても、この異界化現象の核を探さない限り、この状況は改善されない。そう考え、有希の能力や思念体と呼ばれる存在の能力に関する考察は後回し。
 そんな、俺の問い掛けに、有希から、同意を示す【念話】のような物が返されて来た。

 少しの陽の気に分類される雰囲気と共に……。


☆★☆★☆


 俺の見ている目の前で、炎を纏いし一刀が、彼女に襲い掛かろうとした巨大な白骨の右手を撥ね上げた。
 しかし、それまで。
 巨大な相手と戦うのに、背後に護るべき存在を置いての戦いはどう見ても不利。

 自らの全身よりも巨大な右手を跳ね上げた瞬間に思わず折って仕舞った右ひざが、少女の次の行動への僅かなタイムラグを招き――――――。
 次に振り下ろされる左手の一撃を、今の彼女には躱す術も。まして、撥ね上げる術も残されてはいない。

 これで、次の瞬間に、目の前に広がるのは無残に散らされた二人の少女の姿が晒されるだけと成る。

 しかし――――――。

 刹那、炎を纏いし少女(相馬さつき)と、巨大な白骨(がしゃどくろ)との間に、二十メートル程の距離を一瞬の内にゼロとした俺と有希が割って入った。
 そして、先ほどの髑髏の群れの時と同じように、俺と有希の前面に展開される防御用の結界。

 しかし、今回の分は、有希が展開させた防御用の結界(不可視の壁)などではなく、俺が施した神明帰鏡符がもたらした結界
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