第19話 有希の初陣
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。髑髏から感じた物は、がらんとした空洞のみの眼窩から覗いた虚ろな死相と、その中にチロチロと燃える、隠し様のない恨みの炎。
そして、生ある者を、己と同じ境遇へと落とそうとする執念。
俺の経験から言えるのは、この類のヤツラに軽く触られるだけでも、霊的な防御力のない人間には、それなりの生気を持って行かれる可能性も有る相手だと言う事ですか。
だとすると、奴等の正体は、
「あいつらは物質化しているように見えるけど、実際は霊体。おそらく、幽鬼に属する存在たち」
怨嗟の声を上げ、生命力そのものを奪い去るが如き魔力を籠めて、俺と有希から一度、遙か上空へと遠ざかる髑髏の群れを瞳のみで制しながら、腕の中の少女に話し掛ける俺。
刹那、大きな哄笑の形に口を開いた髑髏の群れが、カタカタと……。カタカタと骨を鳴らして、再び俺と有希の元に殺到しようと試みる。
「故に、物理的な攻撃は、殆んど意味を為さない」
そう有希に伝えた瞬間、俺の周囲に複数のこぶし大の光る玉が浮かび上がった。その、蒼白き光を放つ……数十の雷の玉は、互いに激しい放電を行い、その中心に居る俺と、有希の姿を昏き世界の中で明るく浮かび上がらせる。
そして、次の刹那。
周囲。有希の視線の高さから、そして、俺の頭上に向かって。丁度、俺たち二人を中心にして、半球上に外に向かって放たれる雷の玉。
「ただ、五行に属する攻撃は普通に通用する可能性が高い」
四方八方から、俺と有希の生気を求めて襲い掛かって来る雲霞の如き髑髏の群れを、その雷の玉が迎撃を行う!
そう。宙を舞う怨恨の昏き炎を纏いし髑髏たちに対して、龍の放つ紫電の一閃が迎え撃ったのだ。
そして、響く轟音と閃光。
聞こえないはずの声なき声が大気を裂いて響き、一瞬にして、数十体の宙を舞う髑髏を、本来、彼らが有るべき世界へと送り返した俺。
そうして、
「有希に、攻撃の部分を任せる事は出来るか?」
……と、緊張した雰囲気も感じさせず、自らの腕の中に存在する少女に問い掛ける。
そう。この程度の事は日常茶飯事。今、目の前を昏き怨恨の焔を纏い、宙空から歯列をむき出しにして俺と有希の二人を虚ろな眼窩で見つめる低級な幽鬼程度ならば、有希を腕の中に納めたままでも、俺一人で十分に相手をして行けます。
但し、もしも、先ほど俺が感じた有希の決意にも似た雰囲気が、俺に着いてラゴウ星との戦いの場に赴く為の決意ならば、この程度の相手を一瞬で退魔出来る能力がなければ、とてもでは有りませんが、彼女を死地へと連れて行く事は不可能。
物理的な手段以外でしか倒す事が出来ない相手。その相手を攻撃する手段が、この人工生命体の少女に存在するのか。その事を知るには絶好の相手だと思いますから。
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