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魔王の友を持つ魔王
§31 鬼と人と
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く。

「愛嬌のある鬼もいるけどさ、多くの鬼は朝廷の反逆者として、退治されてきた。だから鬼とは敗北してきたお上に抗う者達とも言えるんだが、さっきも言ったように鉄を大将達は武器として使うよなぁ? ……ところでその武器、どっから手に入れた?」

 他愛無い雑談。しかしそれがもたらした効果は絶大だった。ぴしりと、空気が凍る気配。鬼神はおそばせながらようやく察する。眼前の剣は、今まで見てきたどんな剣よりも凶悪な代物であると。

「鬼伝説のあるところに鉱山有り。現に大江山(ココ)、昔から金山郷と言われた大鉱山地帯なんだってね?」


「小童が!!」

 襲いくる鉄棒を金色の剣で両断する。今回初めて与えた有効打に、思わず黎斗の顔に笑みが浮かんだ。

支配者(おエライさん)は鉄が欲しい。武器としても。農具としても」

 鬼神の格闘を回避しつつ言霊を込める。単純な身体能力は依然脅威だが、単純な力”だけ”ならば対処のしようもあるというものだ。

「ところで製鉄民は製鉄の過程で廃棄物を川に流すよね。そしたら川の水で農業を営む農民からしてみればふざけんな、って話になるわけだ。両者の間で抗争が起こる。支配者(おエライさん)にとってコレって絶好の大義名分じゃない? 悪者をやっつけて、同時に鉄も手に入る」

 輝きを見るに威力は十分だろう。そう感じつつも、念のためのダメ押しの言葉も忘れない。

「一つ目鬼なんかはその典型例だ。産鉄民のシンボルは一つ目。なぜならば燃え盛る炎を用いる作業で目をつぶるから。火勢で目を潰すことも多いから。天目一箇神も、キクロペスも、バロールも鍛冶に何らかの形で関わってる」

 不意に、どこかの図書館で読んだ内容を思い出した。たしかそれは???

「あぁ、そうそう。なんだかんだここまで言ったけどさ、”鬼”を昔話とかに登場する「人に災厄を齎す存在」とするならば。川を汚染し稲を枯らす産鉄民って」

 袈裟斬りで一閃。呟いた言葉が伝わる前に、神速の剣は敵を裂く。

「???農民にとっては”鬼”だよね?」

 後ろに跳躍する鬼神を追撃せず、袖口に忍ばせたクナイを投擲。熔かされずに突き刺さるクナイは鬼神の肉体を抉っていく。

「……ここらは奥田先生の受け売りだけどさ。言い回しはすごい秀逸だと思うの」

 雲霞の如く浴びせられるナイフの群れは、酒呑童子を追い詰めていく。

「これでワケのわからんその能力は封じたぞ大将。チェックメイトだ。やれやれ、鋼を自在に操る製鉄の民ならば火も水も効かんわなぁ」

 火も水も、鋼を作るのに必要なことを考えれば最上位の魔術で傷一つ与えられなかったのも納得がいく。

「ま、素直にここは行きますよ?」

 決意を決めて右手に持つは、かつて彼の鬼神を
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