反転した世界にて6
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ちそう)」
ポーカーフェイスは得意だと、我ながら自負していたつもりなのだけれど。ちょっといまばかりは自信がない。顔が熱くなっているのは間違いないが、下半身の暴走だけは気合と根性で阻止している。であるがゆえに、それ以外の体勢を整えていられる余裕がないのだ。
昨日とはまた違うベクトルで悶々とする。
そんな試練の時間は、電車が目的地にまで到着するまで続いた。
◇
朝。この時間の教室は、人もまばらで風通しがよく感じる。
運動部に入っている生徒は、まだギリギリ朝練の時間なのだ。
いつも通りに立ち回るのであれば、僕は教室の扉を開けたと同時に、一切の無駄を排して自分の席にまで直行するのだけれど、今日ばかりは勝手が違う。
白上さんに、お弁当を渡さなければ。
「うぉ……」
教室の扉を開けた途端、ギラリと音が聞こえてきそうな勢いで、僕の方に向けられる視線。
理由は、なんとなく想像できる。昨日、喫茶店で荒井くんと相談していなければ、思いもよらなかっただろうとは思うけれど。
――昨日、僕は"白上さんにお弁当を作ってくる"と、クラスのど真ん中で公言してしまったわけで。クラスメイトたちの反応も、まあ予想できたことではあった。
だからといって、居心地の良い物ではない。反射的に顔を伏せてしまいそうになるのを堪えて、僕は室内を軽く見回す。
――果たして、目当てのポニーテール娘はすぐに見つかった。
「……」
自分の席で、頬杖をついて窓の外を眺めている、ように見える。――彼女の席は窓際から離れた、教室の中央付近に位置するので、実際のところその瞳に窓の外が映っていたかどうかは定かではないけれど。
そんな横顔もやはり美しい。このまま見惚れてしまいかねない。
の、だけど。
「……」
僕は自分の席に向かいながら、何気なく彼女の様子を観察していたのだけど。
なんかすっげえ、そわそわしてる。多分にフィルターが掛かってしまっているであろう、僕の眼を以てしても、一目で彼女が"落ち着きのない様子"であることを看破できてしまう。
しかし、彼女の方から僕に近づいてくる気配はない。というか、僕が登校してきたことに気づいてすらいない。
「……えっと」
「……」
事実、僕は直接自分の席に向かうのではなくて、彼女の横にまでこうしてやってきたわけだけれど、一向に振り向いてくれそうにはない。
……やっぱり、僕の方から話しかけた方がいいんだろうか。
勘弁してほしい。自分から誰かに話しかけるだなんてそんな偉業、ここ十年近く、挑んだ覚えはないのだけれど。
しかし、こうしていても始まらない。幾らか、頭の中で"円滑なコミュニケーション"をシミュレーションしたのち、僕は意を決して白
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