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Report8-2 ディオニシオス/スプリンター
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お約束の台詞。
――鬼さんこちら。手の鳴るほうへ――
両者は同時に相手へ向かって駆け出した。ガイアスはいいが、鬼役に近づくだけでリスクが上がるユティさえも。だがガイアスもすでにユティが奇策を用いる――好むと理解しているのでこれは想定内。
そして、自分を飛び越えようとしたユティの、足を掴んだ――はずが、手応えが軽すぎる。
見ればユティは掴まれたブーツを脱ぎ捨てて逃れていた。
「ねえ。どうしてワタシがわざわざこんなオネガイしたか、分かる?」
下半身が無理なら上半身を。体格差を利用して上から押さえようとしたが、少女は蛇のように逃れてまた一定距離を保つ。
(蛇……いや。これは、蝶だ。夜の森を翔ぶ夜光蝶)
ガイアスが何度捕まえようと手を伸ばそうが、蝶はひらひらとすり抜けていく。跳んで、滑って、転がって。
「アナタがルドガーの任務に付いて来た時から、ユティはずっと変だった。アナタの言い分は正しいのに受け入れがたい何かがあって、エラーだった。今日、アナタに、ワタシが言われて、やっと、掴んだ」
「何を掴んだと言うのだ」
片足だとバランスが悪いのか、ユティは残ったブーツも脱ぎ捨てた。ガイアスは再びユティとの距離を詰めるが、ステップを踏んでユティは華麗に避ける。
「何でアナタなんかに品定めされなきゃいけないの」
囁きは耳元。回避のためにガイアスを飛び越えた際、空中で逆さになったユティが言ったのだ。
「『お前が世界の命運を預かるに足る人間か見極める』? そんなのそっちだけの事情であって、ルドガーにとっては給料貰ってエルたち養うための大事なお仕事。ワタシもバレた以上仕事意識で臨むつもりだし。そういう仕事人の現場にズカズカ踏み込んで『見定める』とか『試す』とか、何様気取り?」
着地したユティが態勢を立て直す前に手を伸ばす。それでもユティは紙一重で避けてしまう。
「ワタシたちを試験するなら、クラン社のエージェントは? ユリウスは? リドウは? ビズリーは? みんな不適格だったらみんな斬ってしまうの? どんな権利があってそうするの?」
ようやくユティの動きに隙が生まれた。捕れる。ガイアスは確信した。
「逆説だよ、アースト・アウトウェイ。アナタこそ、ワタシタチを見極めるに足る人間なの?」
掴めるはずだったガイアスの手から、その夜光蝶はひらりと逃れた。
「そこんとこ
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