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レンズ越しのセイレーン
Report
Report8-2 ディオニシオス/スプリンター
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? クラックだけど。カメラの子、今こっちにいるよ。ん? ああ、商業区』

 トリグラフ中央駅構内で、客の多さに紛れて消えた少女はいつのまにか逆走していた。

 駆けつける。クラックやターネットら、マシーナリーズのメンバーが手を振るほうへ走った。

「ユティは」
「そこに……ってあれ!?」

 いねえ!? いつのまに!! と、騒ぐマシーナリーズの若者たち。
 ガイアスは頭を軽く押さえた。彼らが彼女を留めておけると思ってはいなかったが。

「なんか、悪い。わざわざ来てもらったのに」

 珍しくターネットから神妙に謝ってきた。

「気にするな…………いや」
「アースト?」

 横紙破りの逃げ役が相手だ。鬼役とて知恵を巡らせてもいいはずだ。幸いにして人員はすぐ目の前にある。

「な、なんかアーさんの顔が怖い……っ」
「違うわよ。アーストのあれは、面白いことを思いついた時の表情(カオ)?」



 一人の少女がトリグラフ港へ駆け込んだ。彼女は手近な柱に凭れて胸を押さえる。
 ぜいぜい、と荒い息をしていた彼女の視線が、近づいてくる一人の男に流れた。

「……、王様のくせに、せせこましい真似してくれるじゃない」

 恨みがましい蒼眸を向けられても、ガイアスは揺るぎなかった。

「お前が設定したルールには、他人の援助を受けるなというものはなかっただろう」
「なかった。だからアナタがターネット君たちを使ったのもズルとは、思わない。ただ、意外。アナタの性格だと、せいぜい聞き込みやタレコミくらいにしか街の人を使わないと思った、から」

 ガイアスはターネットたちに頼んで、商業区の出入口と裏路地に立ってもらった。ユティに会ったら邪魔をするようにと言い含めて。
 そしてさすがは不良グループ、マシーナリーズは街の裏路地の地形を完璧に把握していた。ターネット曰く「イーマイのおやっさんから逃げるのによく使う」のだとか。

 彼らに商業区を囲い込まれたユティが逃げて来られるのはこの港だけ。そして港から商業区に戻る道にはミュゼを配置した。彼女は今、袋のネズミだ。

「俺も捕まえるのは独力で、と考えていたが、このゲーム、お前の意図は別の所にある気がしてな」
「聞かせて」
「俺とて街の住人全員と知り合ったわけではない。それなのにお前は『都合よく』『俺の知り合い』にばかり目撃されている。まるで俺が『知り合った者たちと速やかに連携しやすく誘導する』かのように。あえて追いつめられ易い逃げ方を選んで逃げ続けた。それが何故かは分からんが」
「そこまで分かってれば充分、ね。ワタシの意図なんて知る必要、ない。ワタシもそろそろあちこち駆けずり回されて体力限界だし。ここらで幕としましょう」

 ユティが柏手を二つ。そして
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