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魔王の友を持つ魔王
§30 鬼の王と正道邪道
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「エル!?」

 言うが早いか飛び出した狐は人に化け、黎斗の影に手を伸ばす。

「あぁもう、任せるよ!?」

 黎斗の了承と同時に、影が開く。紫の長髪が眼前を通り過ぎ、現れるのは鈍色の輝きを放つ重火器(ガトリング)。影からその全容を現した瞬間、転移中は封印されていた重量がずしりと大地にのし掛かる。台車に乗った巨大な砲身が重力を思い出したかのように地面に落ちて重量級の音を醸し出す。

「いっきますよー!!」

 地面に薬莢が散乱し、周囲に轟音が鳴り響く。魔鉄(オリハルコン)を加工して作られた弾丸は、黎斗の馬鹿馬鹿しい呪力を宿され毎分三百発、という速度で鬼の群れに襲いかかる。連射性能が今から見れば皆無なのは、素体が旧式(レトロ)だからに他ならない。戊辰戦争の際の速射砲(ガトリング)一基、これを基本(ベース)に改良したものだからだ。つまり皆がわからなかったので手を着けなかった部位。そこを黎斗が中途半端に弄くった結果だ。

「やっぱっ! 反っ動がっ!」

 不慣れなせいか重量的に仕方がないのか、エルは兵器(マシンガン)の反動に耐え切れず、発射するたびにガクンガクン揺れていた。それも痙攣にしか見えないレベルで。紫の長い髪が激しく動きもはや顔がほとんど見えない。反動に耐え切れないせいか時折発されるエルの悲鳴も爆音でほとんど聞こえない。

「うーむ。これは改良の余地大アリだな」

 砲台に好き放題振り回される美少女、というある意味絵になる構図だが演出しているのは地獄絵図だ。速射性能こそ低いものの神殺し(れいと)の呪力を限界まで込められた魔弾は、鬼を容易く貫き引き裂き吹き飛ばす。叢雲くらいの神獣でない限り、この段幕を突破することは叶わない。数多の戦鬼は接近することを許されずに消えていく。

「うわ……」

 しかし鼓膜をつんざく酷い音と一緒に、破壊の痕跡も量産されていく。足を喪った鬼や腹に大穴が空いた鬼が手を伸ばしている様子が非常にグロテスクで恐ろしい。トラウマものの光景だ。

「世紀末すぎるわ」

 とりあえず魔弾が有効であることはわかった。この分ならば軌道上に衛星を作って魔弾製ミサイル投下、なども良いかもしれない。こちらの方が近未来的でカッコいいし、相手に妨害されにくい。そんな技術を周囲の存在が誰も持っていないから現時点での実現は厳しいのが難点か。とりあえず今出来るのは地雷辺りか。地雷原を作り、そこに上手く神獣を誘導できれば今よりラクに斃せるだろう。一々術者が決死の覚悟で挑む必要が無くなる。

「僕が魔弾とかは作る必要があるしその原料も一月の間に作れる量決まってるんだけど、一考の余地はあるか」

 完成すれば神獣の出現程度ならば黎斗達(チートたち)の出番も恵那達((ぎょくさ
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