§30 鬼の王と正道邪道
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ので個人の感想を述べる。もうこうなったら彼の望む選択肢でないと即ゲームオーバー、などといった鬼畜仕様ではないことを祈るだけだ。
「くは、ははははは……!!」
果たして結果は吉とでたらしい。突然笑い出す酒呑童子。
「それだ。それだよ。水羽黎斗」
初めて、名前を呼んだ。今までずっと坊主で通してきたのに。
「卑怯。貴様は確かに今そう言ったな? それこそが、貴様を選んだ理由だよ」
「な、何を言って……」
「貴様は異質なのだよ。奸計謀略騙し討ち。それらに忌避感を抱くお前こそが、儂の最期の相手に相応しい」
貪欲に勝利を求める姿勢、この態度事態は嫌いではない。しかしこれが悪化した姿勢、悪く言えば”勝利の為に手段を選ばない戦略”を黎斗は好まない。だから黎斗は最善手を取らない事が多々ある。それによって死にかけたことなど枚挙にいとまがない。酒呑童子が「異質」と称した所以だろう。だか、何故そこまでこの鬼はそこに拘る。
「確かに卑怯は嫌いだけどさ。何故わかったの?」
「愚問だな。我らは拳で語る存在。一度戦り合えばそれでわかる」
「熱血な回答入りましたー……」
「毒酒を飲ませて騙し討ちなど、王者の所行に非ず」
人間達に毒酒を飲まされ討伐された、酒呑童子の本音。「鬼に横道無し」と源頼光らに叫んだ鬼は首を斬られた。致命傷を受けてなお、この鬼は死なずに生き延びた。都へ持ち帰られた首だけで頑強な結界に囲まれた京から逃亡することに成功したのだから大したものだ。
「……」
「だが結局は騙された方が悪い、のだよ。我らの世界ではな。騙された方が悪い。隙を見せた方が悪い。−−負けた方が、悪い。それが我らの闘争だ。だから、他の輩では駄目だ。自らが危機になれば容赦無く誓いを破る連中達ではいかん。搦め手などと言って奸計を用いる者達など願い下げだ。両者は正道にあらず。いざ勝負と参ろう、黎斗よ。正攻法で儂を突破してみせろ。王道にて儂を打ち破ってみせよ」
放たれる言葉の数々に、黎斗は絶句し硬直してしまう。神から、このような申し出を受けたのは初めてだ。
「儂はもう直に消滅するだろう。再び現界するのが何時になるかなどはわからん。故に、だからこそ、己が幕引きは満足なものにしたい。正々堂々、全力での闘争を。血湧き肉踊る、悔い無き闘争を??!!」
渾身の叫びは、破壊を伴うまでになっていた。物理的な威力を持った彼の声は、屋敷の屋根を吹き飛ばし、畳を遙か空に巻き上げ、巨大な柱に軋み音を強制する。結界のお陰で、黎斗の周囲こそは無事だが、辺りは惨々たる有様だ。思わず溜め息が出てしまう。
「……はぁ。大将、屋敷ぶっ壊してどーすんの?」
「これから死ぬ儂には、関係のない話よ
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