§30 鬼の王と正道邪道
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ってないでください。茨木様を見失いますよ?」
「へいへい」
尻尾でぺちぺち頬を叩くエルに降参の意を示して、黎斗はやや速足で茨木童子を追いかけた。
「坊主、久しぶりだのぅ」
大広間の上座で悠然としている、と思いきや。
「具合悪いってマジだったのか……」
鬼王は布団から体をやっとの思いで起こす有様だ。周囲に用途こそわからないが、巨大な魔法陣が幾重にも彫られている。
「一応、お土産持ってきた。グラビア雑誌居る?」
「カカカッ。貢ぎ物ご苦労。無用の長物だが、まぁ受け取っておいてやろう」
「えっらそーに……」
「実際偉いお方ですけどね」
ふてくされる黎斗と宥めるエル、といういつもの構図に酒呑童子は笑みを浮かべる。
「なによ大将。まーいいけど。……要件は何?」
黎斗の問いに笑って答えず、鬼王は彼に問いを返す。
「この多数の陣、なんだと思う?」
「質問に答えてよ。……ったく、病を治す目的じゃないの?」
「否。否よ。そもそも鬼を致死に至らしめる神便鬼毒酒を直接飲んだのだ。今生きているだけでもたいしたものよ」
確かにあの酒を飲んだ鬼は酒呑童子を除いて全員死んだという。それを考えれば生きているだけで格の違いがわかるような気もする。
「自分で褒めるんかい。っかさ、酒を直接以外でどーやって飲むんだか」
「この陣は、儂の理性を保たせる術式よ」
「……は?」
「坊主よ、貴様の来る頃合いはばっちたいみんぐだったぞ」
鬼が外来語を使うと違和感がものすごい、などとこの時の黎斗に考える余裕は無かった。理性を保たせると、鬼の王は確かに言った。その言葉が意味することは、つまり??!!
「野生の神に戻る気かよ大将!? 何考えてんだ!!?」
泡を食って詰め寄るが、当の本人は涼しい顔。
「儂の寿命はもう尽きる。忌々しいこの毒酒によって。ならば、最後に満足のいく殺し合いをして逝きたいというのが人情だろう」
「もうヤダこの戦闘馬鹿たち!!」
たまらず黎斗が悲鳴を上げる。
「大体なんで僕なんだよ!? 介錯なんざ須佐之男命に頼めばいいだろ。闘いがやりたいなら他の神殺し達に喧嘩を売ればいいじゃない」
「それでは駄目だ」
突然、声音が冷酷なものに変貌する。
「坊主、貴様は騙し討ちを肯定するか?」
「イキナリ何を……」
「答えろ」
突然の変調に黎斗はまったくついていけない。どうやら変なところを刺激してしまったらしい。
「……肯定は、しないかな。まぁ相手がクソ外道だったら別にいいけど」
しょうがない
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