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魔王の友を持つ魔王
§29 そうだ、京都へ行け
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((カタストロフィー))は肉壁に阻まれ、邪気を切り裂く鋼の金棒と少名毘古那神の権能──矮小なる英雄(シタサキサンスン)──によって得た身体能力すら上回る圧倒的な力。蒐集してきた武具の数々を触れるだけで熔解し、須佐之男命から拝借した稲妻と竜巻すら彼の頑強な肉体は凌ぎきる。鬼の王。鬼の神。そう呼ぶに相応しいあの化け物が倒れたなどとはいくら情報源が須佐之男命とはいえ、はいそうですかと容易に信じれるわけがない。

「……そういや数百年程前に大将って二日酔いして、その最中に奇襲喰らったんだっけ?」

 確かそれが原因で酒嫌いになった筈だ。

「流石に酒が嫌になったらしい。一歩間違えていれば人間に殺されていたからな」

「あー、最初は酒で腹痛起こしたところを武士ズに首ちょんぱされたんだっけ?」

 複数相手にしていたからとはいえ、自分を苦戦させた存在が腹痛で武士相手に不覚をとったことを嘆くべきか、首だけになっても死なずほとぼりが冷めたころに偽の首をこっそりおいて復活した生命力を称賛すべきか。

「あの時は状況が特殊だった。まつろわぬ神の闘争に人間共が利用された、という方が正しい。毒酒を飲ませて行動不能にした時点で人間の出番は終わりだった筈なんだが……ま、それも過ぎたことだ」

 一歩間違えれば神殺しが爆誕していたのかと、今更ながら事の重大性に気付く。もし出現していれば今まで以上に面倒なことに巻き込まれていたのかもしれないと思う反面、引き籠り仲間が増やせなくて残念だと思う、相反する感情がせめぎ合う。

「さいですか。んで、何故に僕に来てほしいワケ?」

「先方のご指名だ。黎斗がいいんだとよ。準備をきちんと整えてこい、とも書かれているな」

 なんだかとってもきな臭いような。雲行きが怪しい気がする。

「準備?」

「あぁ。細かいことはあった時に話すらしいが、化物退治の準備を万全に整えてきてほしいんだとよ」

 化け物と言われた。そんな存在が出現していたら甘粕か護堂経由で情報が既に来ていてもおかしくないはずなのだけれど。それとも現段階では酒呑童子達しか知らないし、現時点では委員会とかの他組織にも伝えるつもりがないのだろうか。だが、何故伝えない? 酒呑童子に茨城童子を始めとした強大な鬼勢力、須佐之男命達古老組、と引きこもり軍団の暗部か何かだろうか?

「……いつかのチート猿みたく僕に封印手伝わせる気? 今度は京都方面の守護神でも作り上げるつもりなの?」

「鋭いな。だが残念、外れだ」

「じゃあなんでさ」

 しつこく聞き続ける黎斗にのらりくらりと躱していた須佐之男命もとうとう白旗を上げることになる。

「……お前もしつこいな。大方殺し合い(たたかい)の準備、だろ。ヤツは戦闘狂だし大いにあり得る」

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