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万華鏡
第二十五話 夜の難波その十四
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「それ考えたら」
「だろ?いい旅行だったな」
「そうね、じゃあ次は」
 夏休みはまだある、次はというと。
「合宿ね」
「広島ね」
 彩夏は微笑んで言った。
「広島も楽しみよね」
「広島っていったらね」
 里香は広島からこういったものを話に出した。
「牡蠣にね」
「それとお好み焼きもだよな」
「そう、けれどね」
 お好み焼きはお好み焼きだ、それでもだとだ。里香は美優に返した。
「大阪のとはまた違うから」
「本当に全然違うよな」
「こっちじゃ広島焼きっていうからね」
 つまりお好み焼きではないというのだ。
「生地と生地の間に具やキャベツを入れて焼くから」
「こっちじゃ一つにして混ぜてからだからね」
 景子は大阪の焼き方で言った。
「それでよね」
「そう、モダン焼きもあるけれど」
「広島でも焼きそば入れるのかしら」
「入れるみたいよ」
 里香は景子にも話す。
「やっぱり間と間に挟んで」
「それでなのね」
「混ぜないの」
 広島のお好み焼きはそうだというのだ。
「挟むから」
「そうよね、最初見てびっくりしたわ」
「あれお好み焼きなのよね」
 琴乃は真剣に言う、広島のそれが彼女の思っている範疇において本当にお好み焼きかどうかということを。
「そうよね」
「広島ではね」
「関西じゃやっぱり」
 お好み焼きならというのだ。
「あの大阪のね」
「混ぜてよね」
「それだけれど」
「こっちじゃ広島焼きって呼ぶからね」 
 関西ではそう言うのだ、広島のお好み焼きは。
「違うわよね」
「私も。実は」
 里香もだった、本音では。
「あれってお好み焼きかどうか」
「里香ちゃんも疑問なのね」
「どうなのかしら、実際のところは」
「難しいわね」
 五人共この答えは出なかった、電車の中で大阪の味を思い出しながら話をしてもそれでもだった。そうした話をして。
 八条町に戻った、戻った時にはもういい時間だった。
 その真っ暗闇で夜の灯りが見える町を見てだ、琴乃は四人に言った。
「楽しかったね」
「ああ、だよな」
「また行きたいわね」
「そうだよな、もう帰ってシャワー浴びて寝てな」
「また明日ね」
「明日部活あったよな」
「あるわよ」
 琴乃は美優に笑顔で話す。
「それに夏期講習もね」
「明日からまた忙しいよな」
「本当にね。けれどいい旅行だったわ」
 日帰りの、だというのだ。
「楽しかったわ」
「今度行った時は何食べようかしら」
 彩夏も目を微笑まさせて言う、その蒲鉾型の目を。
「お好み焼きだけは食べてないから」
「お好み焼きね、今度は」
「大阪のをね、そうしようね」
 彩夏は景子に応じて言う。
「今度はね」
「ええ、それじゃあ今日はこれでね」
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