第九話 幼児期H
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た……になってしまうかもしれないことが。
「あれからコーラルに、また何回か上層部の部屋に行ってもらっただろ」
『……えぇ』
半年ほど前に俺は上層部の部屋にコーラルを向かわせ、映像証拠を撮った。それからも何回か同じように映像を記録していた。これがあれば保険になるかもと思ったし、いつ事故が起きそうになるのかの検討材料にもなるかと思ったからだ。
だけど、それらの映像を見せてもらった時、正直いってまいった。コーラルから見せてもらった映像には、想像以上に劣悪な管理状況と上層部の思惑がはっきりと映し出されていた。この映像は証拠にはなるはず、だけどこれだけで本当に大丈夫なのか。不安の2文字がよぎる。
事故は起きる。俺の中にある原作知識ではっきりと覚えていることだ。正直、俺というイレギュラーが入ったことで、もしかしたら事故が起きない未来もあるのではないかと思ったこともあった。だけど、漠然と理由はないけれど、俺はその考えを否定した。事故は必ず起きる、そんな予感が収まらなかったからだ。
「事故が起きたら、どうなるのかな」
『ますたー。事故が本当に起きるかどうかは』
「……じゃあ、もし起きても起きなかったとしても、母さんは大丈夫なのか」
『……裁判ですか』
コーラルの言葉に俺はうなずく。事故や不祥事が起こったとしても、上層部のやつらは裁判になっても問題ないと話していた。それは裁判官を抱き込んでいるからであり、証拠も隠蔽しているからであろう。さらにそれらを後押ししているやつらも上層部以外にいる。
原作で確か母さんは、裁判で訴えたが敗訴となり、ミッドチルダを追放された。さらに上層部のやつらは母さんにすべての罪を擦り付け、自分達は悠々と椅子に座り続けた。
もし事故が起これば、当然責任問題が発生する。果たして主任である母さんを、上層部がスケープゴートにしない可能性はどこにあるだろう。もしかしたら他の開発メンバーのみんなに矛先が向くかもしれない。少なくともあいつらが捕まる可能性は低く、原作通り母さんに罪を被せる可能性の方が高い。
この映像記録だけで、本当にいいのか。保険なんてそんな程度で、本当にいいのか。あいつらは母さんを潰す気だ。俺たち家族を潰す気なんだ。事故が起きない場合だって、真実を知る母さんを野放しする保証がどこにある。
「大丈夫じゃないよな、やっぱり。本当、……なんで俺の周りって理不尽だらけなんだろ」
産まれた時から思ったことだ。不安に思った。なんでこんなにも壁がいくつもあるんだろうか。なんでこんなにも俺たち家族の先には、幸せが遠いのだろうかと思った。
不安が胸中に広がる。だけど、不安以上に俺の心の奥にはもう1つの感情があった。それは徐々に不安すら塗りつぶすほどに大きくな
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