Episode 3 デリバリー始めました
スイートは爆発だ!
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ることだろう。
彼女たちの理力は植物の育成や進化を自在に行うことが出来るのだから。
狩猟文化まっさかりな絶界"モルクヴェルデン"には基本的に農民がおらず、植物を扱うのは基本的に薬草菜園を管理する森の精や野の精の領分である。
キシリアがこの場所に店を開いている最大の理由は、この近くの森に気のいいドライアドたちが多数住んでいるからだ。
……別にドライアドさん達が全員ヌーディストで美人揃いだからって理由じゃないからな! とは、キシリアの談である。
「ほんとならイトウの作成なんて全部で1週間ぐらいかかるんだけど、こういうところはほんと便利だよなぁ」
そう言いながらキシリアが倉庫から持ち出したのは、真っ黒な籾に包まれた穀物の袋。
それを大きなザルに入れると、パンと手を打ち鳴らした。
それだけで真っ黒な表皮が全て剥がれ落ち、ザルの中には真っ白な粒だけが残る。
魔界名、『烏金雨草』。
地球名で『もち米』と言う穀物の代用品である。
キシリアは脱穀したての大量のもち米を水につけると、再び理力をかざして水を染み渡らせる。
さらにそれを魔女が使うような巨大な釜に放り込み、水を加えて火にかけた。
やがてもち米の粒が形をなくして柔らかくなった頃、テリアが森から帰還する。
「ただいまだニャ。 ドライアド達に頼んで麦の発芽が終わったニャ! すごい眼福だったニャ!」
「お、いいタイミングだな。 つーか、感想はそれかよ。 まぁ、おおむね同意できるがな。 じゃあ、水をきってそれをこの釜の中に全部入れてくれ」
そう告げると、キシリアは理力を駆使して釜の中の温度を50度に低下させる。
さらにテリアから受け取った発芽した麦を釜に投げ込み、満遍なく混ぜはじめた。
「あとはこのまま6時間ほど温度を保つ必要があるんだが……そんな時間はないんだよな」
そう告げると、キシリアは釜の拡販をテリアに任せ、自らは手を祈りの形にくみ上げた。
「何をする気だニャ?」
「錬金術師たちの真似事だよ」
テリアの質問にそう答えると、キシリアは静かに詠唱をはじめる。
「世界よ、我が理力よ、我が言葉を真実として受け入れよ。 我が祈り、糖化酵素の力を高め、その働きを加速せん」
それは錬金術師たちが納期に間に合わないときによく使用する『反応加速』の理力だった。
なかなかに制御が難しい術でもあるのだが、錬金術師たちは必要もなければこの術を使わない。
なぜなら……
「花が野に、鳥が森に帰るが如く、時の所産よ今ここに来たれ。 急々如律令、熟!」
キシリアの詠唱が終わると、釜の中からザワザワと何かが震えるような音が響き始める。
「な、何が起きているニャ!?」
「うん。
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