Episode 3 デリバリー始めました
スイートは爆発だ!
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ノルベルトさんに注文を出そう。
彼ならば、畑違いのテンチャー狩りでも問題なくこなせるに違いない。
「ぬはははは! 泥舟に乗ったつもりで待っているがいいニャ!!」
それは必ず沈むという自信なのだろうか?
キシリアがそう問いかける暇も無くポメはその身を翻し、空中の何も無い場所をその脚で蹴ると、風のような速さでその姿がドアの向こうに掻き消えた。
並みの者では残像を目で追うことすら出来ない、実に見事な"疾走"の理力である。
まぁ、元が肉食獣のせいか、長距離の移動が出来ないという欠点はあるらしいが。
「こういうところだけは怪盗らしいよなぁ」
「マスターよ、それは絶対に褒めてないニャ」
残ったテリアが突っ込みを入れてきたが、キシリアはそれに返事を返さなかった。
「さて、こっちはこっちで仕事にかかろうか」
首を横に振って顔にへばりついた不安を振り払うと、キシリアは他の材料を確保するために再び羊皮紙をめくり始めた。
「……何をする気だニャ?」
「うん。 家鴨を焼く前に、全身に"皮水"ってタレを塗らなきゃいけないんだけど、その皮水の材料になる"イトウ"を作るつもりなんだ」
「イトウ? なんニャそりゃ」
聞き覚えの無い食材に、テリアの耳がピンと立ち上がった。
猫の性なのか、どうにも好奇心の強い性格である。
「そうだな。 トロリとした液体で、口の中いれるとサラリと蕩ける、甘くて美味しいもの……だな」
「ニャ!? な、なんかとてもおいしそうだニャぁ……ジュル……」
想像しているうちにテリアの口からヨダレがあふれ出す。
「はいはい。 どんな味かは出来上がってのお楽しみ。 まずは大麦……じゃなかった。 巨禄六月草の実を発芽させるところからはじめるから、そこの袋と盥と水を持って近所のドライアドさんのところに行ってくれるか?」
柔らかい肉球で口元を拭う仕草に苦笑しながら、キシリアは部屋の隅に積まれている麻袋に指を向け、その理力を開放した。
「我が理力よ、我が言葉を真実として受け入れよ。 大麦一袋に告ぐ。 我が祈り、命となりて、また手足となりて汝に与えられん。 悠久なる眠りより目覚め、自らその主につき従うべし。 急々如律令、跳!」
キシリアの言葉に従い、山と詰まれた麻袋の中から袋が1つ生き物のように飛び跳ねてテリアの下にやってくる。
「おぉ、了解だニャ。マスターの術も大概便利ニャな。 ……でも、やっぱり詠唱式はダサいと思うニャ」
「……ほっとけ!!」
キシリアの怒声を背中に浴びながら、テリアは外の一輪車に大きな盥を乗せ、キシリアの理力で命を吹き込まれた麻袋を率いて、ドライアドたちが住む森の中に消えていった。
ドライアド達に任せれば、少なくとも数時間は必要な麦の発芽も一瞬で終わ
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