第179話
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の眼を見た瞬間、言葉を失った。
冷酷で冷たい視線。
ゾクリ、と背筋が凍った。
「確かに俺の能力を使えば中の人を助ける事は可能だ。」
「だったら!」
「だがな、当麻よ。
俺達は何をしにここに来た?
アビニョンの暴動に巻き込まれる人達を救いに来たのか?
違うだろ、俺達はこの暴動の原因を作っているC文書の破壊だ。
目的を間違えるな。
一々、悲鳴をあげる人々を救っていたら、C文書を使って暴動を起こしている魔術師はここを離れる可能性が高い。
そうなったら手遅れなんだよ。
確実に暴動は戦争へと変貌し、世界規模でこれ以上の悲劇が始まる。
それを分かって助けるというのなら好きにしろ。
俺達の為に自らを犠牲にした親船の思いを無駄にする事ができるのならな。」
淡々と話す麻生の言葉は正論だ。
五和の仮説が正しいなら、アビニョンでC文書を使っているから、未だ暴動で治まっている。
これが完全に効果が発揮されれば、それこそ取り返しのつかない事態に発展するのは間違いない。
胸ぐらを掴んでいた手を離したが、上条は少し俯いて手を強く握りしめる。
「ちくしょう・・・行くしかないんだろ!!」
吐き捨てた上条は、ギリギリと奥歯を噛む。
「そ、その、気休めにならないかもしれませんけど。
あの動きなら人は死にません。」
「だろうな。
死ぬような感じだったら問答無用で能力を使って止めている。」
えっ、と意外そうな顔を浮かべて上条は俯いた視線を麻生に向ける。
「何だ、冷酷な人間にでも見えたか?
目の前で死にそうになっている人を見捨てれば目覚めが悪いからな。
一分一秒でも争う時でも、たぶん救うぞ、俺は。」
逆に死にそうでなければ見捨てるけどな、と付け加えて言う。
その言葉を聞いて何故か上条の顔に笑みが浮かんだ。
自分でも理由が分からないが、笑みを浮かべている。
「移動するぞ。
ここにも奴らが来るかもしれないからな。」
「ああ!」
「はい!」
三人は左右に高い壁がそびえる裏通りを走る。
馬鹿げた事態を一刻も早く終わらせるために。
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