第179話
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なかった。
道路に面した壁は全てガラス張りになっていて、そこには一人用の長テーブルがズラリと並んでいた。
フロアの中央部は四人掛けのボックス席になっていて、店の奥が注文受け付け用のカウンターとなっている。
上条はフランス語は読めないが、所々に煙草の禁止マークが描かれたプラカードが張り付けてある所を見ると、どうやら全席禁煙らしい。
違いと言えば、店内にいる客ぐらい。
当然ながらここはフランスなので日本人が見当たらない。
パラシュートで降下した辺りには人がいなかったが、この店内はそこそこ混んでいる。
デモや暴動を恐れているとはいえ、生活していくためにはずっと閉じこもっている訳にはいかない。
それともう一つ。
客の大半が、髪や服が乱れており、泥がついていたり、手足に包帯を巻いていた。
屈強な大人から小さな子供まで、最低でも顔に青あざがあり、無傷である人間の方が珍しいぐらいだ。
「デモや抗議活動か、か。」
上条は思わずポツリと呟く。
今の所、学園都市とローマ正教は全面対立の意思は見せているものの、本格的な軍事行動にまでは発展していない。
しかし、それでもやはり『変化』は着実に世界を蝕み始めているのだ。
誰にとっても望まれていない、忌まわしい『変化』が。
「早く、何とかしなくちゃいけませんよね。」
五和が小さな声でそう言った。
「だが、今は食事の時だ。
食べながらでも話は出来る。」
割と腹が減っているのか、少し早足で麻生はカウンターに向かう。
のんびりと物を食べている場合ではないのだが、何も頼まないで居座ると目立ってしまう。
上条はカウンターに向かう。
当然ながら、レジの前に立っている店員のお姉さんはフランス人だ。
「い、五和さん。
フランスに着いたらフランス語で話さなければ駄目だろうか?」
「はい?」
「例えばフランス人だけど英語もできますよ的な、そんな展開は待ってないかなという話です。」
「ええと、EU圏内なら大抵英語は通じると思いますよ。
海に囲まれている日本と違って、こちらは国境の感覚が希薄ですから。
あっちにいるお客さんはドイツ人ですし、向こうの方はイタリア人のようですし。
いろんな国の人と話す必要がありますから、チェーン店の客商売はフランス語しかできない、ということはないと思いますけど。」
そっ、そうかー!!、と上条は俄然やる気になった。
携帯電話の学習アプリ『かんたん英語トレーニング』の成果を見せる時がやってきた。
実はあの携帯アプリは練習レベル4で行き詰まって挫折したのだが、それを気にしても仕方がない。
上条はガチガチの足でカウンターに行くと、店員が『ご注文は?』と尋ねる前に。
「コーヒーアンドサンドウィッチ、プリーズ!!」
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