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少女1人>リリカルマジカル
第二十八話 少年期J
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れに母さんたちは、自分たちの技術をミッドの平和のために使っていこうと話し合っていた。これからクラナガンに住む自分たちへの安全にも繋がるという理由もあるが、やっぱり総司令官たちへのお礼の側面が大きいと思う。

「テスタロッサさんたちなら、きっと素敵な物を作ってくれそうね」
「みんなだったら絶対にだよ」
「ふふ、それもそっか。……よし! 私も頑張らないと。まずは今日のお料理で私も最高のものを作ってみよう。テスタロッサさんがお仕事に復帰されたら、お祝いに食べてもらいたいわ。アドバイスもすごく勉強になるしね」

 買い物袋を持っていない方の手をグッと握りしめ、やる気を出すお姉さん。おぉ、それはすごく楽しみだ。子守りをしてくれていた時も、時々お裾分けをしてもらっていた。お昼ご飯を作ってくれたこともあり、妹もおいしいって喜んでいたな。

『いいですねぇ。ちなみに何を作られるのですか?』
「今日は煮つけにするつもりよ。さっきお店に行ったらいい材料が手に入ったから」
「煮つけか、いいなぁ。魚ですか?」

 俺の質問にクスッと笑いながら、お姉さんは首を横に振る。すると片手で持っていた袋の口を開け、もう一方の手を袋の中に入れた。どうやら直接見せてくれるらしい。

 何が出てくるのかと見つめる俺たちに、お姉さんは楽しそうに微笑む。ごそごそと片手で探り、それから「よっ」と掛け声を出しながら、袋の中入っていたものを見せてくれた。


「じゃーん、答えはカボチャでした。お店ですごくお手頃価格で売られていてね。品質も良くてこれは買いだと思ったの。余ったものはケーキやサラダにするつもりよ」

 取り出されたのはお姉さんが言うとおり、おいしそうなカボチャだ。見事なカボチャ。紛うことなきカボチャであった。

「……あ、うん。そっか、かぼちゃでしたか」
「ん? どうかしたの」
「ううん、なんでも! お姉さん、おいしいものを作ってね!」
「えっ。あ、ありがとう」

 俺の反応に不思議そうな顔をされたが、笑顔でしのぎ切る。取り出されたカボチャをまた買い物袋の中に入れ直し、少しばかり会話をしてお姉さんと別れることになった。元気でね、とひらひらと手を振ってくれたお姉さんに、俺も手を振りかえした。


「……なぁ、コーラル」
『なんですか』
「お姉さんがさっき見せてくれたのって、俺もよく知っているカボチャで合っているよな?」
『カボチャでしたね。大きくて形もよいものでした』
「まるごと1こだったよな」
『まるごとでしたね』

「……お姉さん、片手で持ってたよな」
『平然と上から掴んでいましたね』
「……うん」

 俺は深くうなずき、口元に小さく笑みを浮かべる。そして視線は空を向き、遠くの流れる雲を幾ばくか眺めた。

 ――
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