三話〜存在〜
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ものや生産系を含め、たいていのスキルは把握している。
故にだろうか、自分が知らないスキルがあるなんて、正直くやしい。
「どんなスキルなんだ?」
気づいたときには勝手に口が動いていた。
「わからないけど、戦闘系のスキルなのは確かよ。最初の所持者が『リン』っていう女性プレイヤーだったことも」
「『リン』……」
脳内の記憶に検索をかけるが、やはり該当するものはない。
「やっぱり、心当たりはないよね」
「あ、ああ……悪い」
「あやまることないよ。私もちょっと前まで知らなかったんだから。それにね……」
そこでアスナは一度声を切ると、表情を沈め、細く弱々しく声を漏らし始めた。
「ほんとに問題なのは《死武王》の詳細でも『リン』の正体でもなくて、《死武王》を使ってPK、プレイヤーキルをするプレイヤーが出たっていうことなの……それも最近」
「なっ……!」
絶句した。
早い。ラフィンコフィンを壊滅させ、いつかまた、近いうちにそういった輩が出てくるだろうと、思ってはいたが……あまりにも早い。
「……今までに何人殺られたんだ」
「正確には、わからないけど……間違いなく……二桁は……」
半ば放心しながら、俺はアスナの切れ切れの言葉を聞いた。
ありえない
その単語だけが頭を右往左往している。
「その『リン』っていうやつがその人数を?」
「ううん、彼女はもう……亡くなっているわ」
アスナがうつむいて首を横に振る。
「だからね、今PKをしているのは、二代目の《死武王》、いいえ、『リン』を殺したやつよ」
憤りを含んだアスナの、絞るような言葉が俺の鼓膜を揺らした。目が涙で潤んでいるのがわずかに見える。悪化させてしまうとわかってはいたが、静かに尋ねた。
「『リン』を殺したやつ……どういうことなんだ?それに二代目って」
「………」
これ以上答えるのは嫌だといわんばかりに、ぎゅっとつぶった目でアスナは黙り込んだ。
やっぱり聞くんじゃなかった。後悔が立ってくるが、いまさら取り消すこともできない。
そのまま俺も黙っていると、今まで顔を伏せていたティーナがアスナの様子をうかがい、ゆっくり話しだした。
「……《死武王》には、いえ、この類のスキルにはある特殊な性質があるようなんです。持ち主を殺したプレイヤーに、移るんですよ、スキルが」
――なるほど
「……そういうことか」
スキル自体が移る。聞いたことのない効果だが《死武王》のような未知のスキルなら、あの男や、おそらく俺も持つ、異質なスキルなら、ありえないことではないだろう。そしてそれが真実ならば、ある程度、この話の本質が見えてくる。
にわかには信じがた
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