第三章
信じてはもらえないかもしれないが彼はクッキーが作れる。
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に浸けます。お次はじゃがいもです半分にわって入れます。玉ねぎも手で半分に…って無理だよっ!? なにこれ、嫌がらせ!?」
「いや、彼は本当に純粋に、これでいつも母さんが作ってくれるカレーができると信じていた。レシピは知らなかったから、いつも食べている具材を使い、足りないとこは想像で補った。…ルー箱の裏に『カレーの作り方』が載っているとも知らずに…」
まわりがうわぁ、という顔をする。…その顔見飽きたわ。
―でも。と、俺は付け足す。
「人参はかたくてじゃりって言うし、わずかに人参臭い。玉ねぎはでかすぎて食べ辛いし食べてみても生のまるごとオニオン。ルーは溶けきってなくて最悪。…彼は自分のカレーを食べて絶望したよ。ここがダメだあれがダメだって、理想だけは高かったんだよね。…でも、彼の家族はほんとうに笑顔で言ったんだ。
『…けど、じゃがいもはやわらかくて美味しいな』…霧夜が作ってくれたのかい? ありがとう、ってね。それを聞いて彼は喜んださ、自分もそれを食べたから余計に家族の優しさがわかった。少し悔しくもあったけどね…。気づけば彼は泣いていたよ。優しさが嬉しかったのか、それとも悔しかったのか…はたまた、両方か、なんてのは覚えてないけどね。…あ、それとじゃがいもだけは確かにおいしかったよ」
「イイハナシダナー」
「優しいご両親ね…。それにしても霧夜…。聞いたことのない名前ね、他校の人かしら?」
「うん、つまり味じゃないんだ。自分が努力した姿勢と、食べてくれる人がいることが重要なんだ」
「そ、そうだよね!」
「マジかよ…」
鉄鉱石って言われても信じちゃうぞコレ、と比企谷は納得いかない様子だ。
「…はぁ。一つ、いただくよ?」
「え、あ、うん…」
―っぱく。
「うん、一番必要なものが入ってて良いと思うけど、焼きすぎに注意ってとこかな? それさえできれば比企谷なんてぶちコロさ!」
「た、頼むからいちコロでお願いします。ぶちコロって…絶対打撃だろ」
「冗談冗談。マイケル・ジョーダン♪ ほら雪ノ下さんも黙って見てないで、どーぞっ☆」
―っぱく。
「……」
二人がなかなかクッキーを食べずにいてくどかったので、俺は雪ノ下の口にクッキーをさし込んだ。
「おい、雪ノ下の目が潤み出したんだが?」
だ、だからどうしたってんだ比企谷!? 何の問題もないと思うが? どのみちお前らもこのクッキー食うことになるんだしさ。
「ふぃなないかひら?(死なないかしら?)」
「さぁな。もう食べた桐山にでも聞けば? 」
「き、桐ヶ谷ふん」
―キュイン。くいっ、ぱくっ。
「おっと名前を間違えられたショックからなのか、誤ってスピーディーに気配を消しながら器用に小さな顎を持ち上げたあとに口を優しくこ
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