第三章
信じてはもらえないかもしれないが彼はクッキーが作れる。
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外とテキパキしてるのな」
「お? まあ、よく作ってたからなー。慣れだよ、慣れ」
「ほー、どんなクッキーを作る気なんだ?」
こうして男二人で雑談を始めた。
――ボウルに入れた卵白にグラニュー糖を投下し、泡立て器で混ぜながら「アーモンドクッキーを作るつもりだ」と俺が言った...途端。へぇ、と頷くだけだった比企谷の表情が戦慄する。
「う、うおぁ...!」
「どうした、比企...うわっはぁ...!」
対極の位置にいる彼女らのテーブルの上は、地獄と化していた...。
「ちょ、ちょちょっと見に行こうか...?」
「う、うぐあぁー」
何それ比企谷、返事? まあ、その気持ち、わからんでもない。
――グラニュー糖と混ぜ合わせた卵白は泡立たない程度がちょうど良いという事もあるので、ひとまず中断し彼女らの様子を見に行くことにした。
雪ノ下と由比ヶ浜さんが料理をしていたテーブルにはインスタントコーヒーやバニラエッセンス、小麦粉、牛乳が飛散していた。悲惨だな、飛散しただけに...。うん、上手いこと言ったな、俺。
――と、現実逃避して、天井を仰ぎ見てしまうしまうくらいには、彼女ら...主に由比ヶ浜結衣の作っていたものは中々のモノだった。
俺の隣に立つ比企谷八幡はその黒い山を一瞥し、それを指差し尋ねる。
「この山...何?」
「隠し味のインスタントコーヒー♪ ほら、男子って甘いもの苦手な人、多いじゃん?」
「「ぜぜっぜ...全っ然隠れてねぇ!」」
てか隠す気ねぇ!
思わず比企谷と声が重なる。だってそうだろ? 百歩譲って、インスタントコーヒーこぼしちゃった、えへ☆ ...でしょ? まさか純粋に料理のためとは...。このっ、黒い山っ!
「えー。うーん、じゃあ砂糖を入れて調整するよー。...こういうの何て言うの? 相殺?」
正しくは相殺。そして、それは調整とは言わないと思うの。だって調ってないし、整ってもないもの...。
ちなみに暴走、自暴自棄がこの場合一般的正解となる。
俺は比企谷と目を合わせてアイコンタクトをとってから、もう一度そのボウルを見つめる。
――何も変わらない。そこには、ただひたすらに高く盛られたコーヒーの黒い山と、その隣に新しく現れた、これも負けじと高く聳え立った白い山が鎮座していた。
その二つの魔境を溶き卵がうねりをあげて呑み込んで、正しく地獄絵図。プカプカ浮いている卵の殻や小麦粉がまるで三途の川にのまれた人間の成れの果て、白く映る白骨のようだ。
某中二病の知り合い風に言うなら「インスタント・ヘル」といったところか...。ちなみにイ
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