第七話「伯爵」
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もう日は落ち、あたりはまっくらだった。タチカゼは、遠い丘の上の城に目がいった。
「あれか?屋敷というより城じゃないか」
すると城内にくるくる回る松明の炎がなにか案内しているように見える。
よく見ると、松明を持つとても大きな大男で男はその腕で、城のはずれの屋敷を指差した。
「ん?ああ、屋敷は城のはずれか。ありがとう!城の者よ!」
タチカゼはお礼の合図に天馬をいななかせると、夕闇の空をかけるように消えた。
天馬を屋敷の門前に着地させると、そそり立つ城とこの大きな屋敷が暗闇にうっすらと青白く光っているような感覚を抱いた。
「……なんとなく不気味だ、城も屋敷も、それにあの町も……」
門がひとりでに開いた。
ふむ、仕掛けでもしてあるのか古い屋敷には多いそうな。
「屋敷の者よ、すまぬが馬を休ませたい、馬屋などはありますか?」
「はい、ございます」
「うん?」
闇の中から声がしたと思ったら、屋敷の従者だろうか小柄の背の折れ曲がった老人が出てきた。その眼はなにか異様に不器用にわずかにも微笑みもせず、まるでよそ者でもみるようにタチカゼを見た。
「それで?あなた様は?」
「こちらの伯爵様に話は聞いておられないか?今夜、一晩の宿の約束をしたのだが」
「ああ、そのことでしたら耳に入っております。伯爵様はえらくあなたを気に入られたご様子で、丁重にもてなせと言われております。こちらでございます。馬屋へ案内しましょう」
老人はそうは言ったが一向にその表情を変えない。よそ者を見る目だ、それどころかこれは、なにかを訝しむ目だ。
とても客人を見るその目ではない。『ふむ、気に入られたとはいえ、貴族というのものは、地位の高さを気にするものかな』と心の中で思った。
タチカゼは馬屋に天馬を結ぶと馬の世話を一通りして、屋敷のなかに案内された。
「まず、湯につかってもらいます。よく見れば、その麻の服もぼろぼろではないですか、伯爵様は、身なりにも厳しい人でございます。ので、それ相応のものを着てもらいます」
「ああ、かたじけない。わたしとしたことが、着物のほつれに気が付かぬとは」
「では着物はこちらで預からせてもらい、ほつれなどは直して、再度お渡しするようにしましょう」
風呂へ案内された。
とんでもない広さの大浴場で、彫刻の素晴らしさは胸を打つほどだ。
とこからともなく女性の使用人たちが入ってきてタチカゼの体をよい匂いのする石鹸で丹念に洗う。
さすがに、まだ若いタチカゼとしては固まってしまうものだ。
なにせ、使用人たちは、みないつものことのようでなれてるらしく恥じる様子は臆面にもない。それもどれもとびきりの美人である。
まあ、向こうはメイドの服を着ているわけだから裸を見たわけでなしタチカゼが固まる必要はどこにもないのだが
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