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剣風覇伝
第七話「伯爵」
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 そうして天国か地獄かそのような一時が過ぎ、体を拭くころには上流の青年貴族が着るような少し若いタキシードが用意されていた。
 黒髪での色の白いタチカゼにはタキシードが不思議と似合う。たいていは体型などで、着こなせるかがきまるが、なるほど体格のよいタチカゼにはどこか、侯爵のような面持ちを見せる。
 そのような格好で、居間にいると、伯爵は現れた。円形にくねった階段をゆるりと降りてくる、タチカゼを見て、一礼した。
「ようこそ、おいで願いました。今宵は特別に贅を凝らしてもてなしましょう。うん?ほう、あなたは洋式の礼服というものが似合うのですね。これは見事だ。うむ、どことなく品のある顔立ちだ。ますます気に入りました。さあ、夕食にしましょう」
「タチカゼと申します、夕食ごちそうになります。どうぞよろしく」
「あ、これは失礼。自己紹介が、ほうタチカゼと申されるのですか、もしや刀の太刀に風と書くのでは?」
「ええ、よくわかりましたね。私の国の言葉が、博学ですね」
「いや、わたしは語学の教授でありましてな。クドロワともうします。ただしくはエルリック・フォン・エリル・クドロワですが」
「旦那様、お食事の支度ができました」
「おお、そうかではタチカゼ殿、食堂へ案内しましょう。コックに腕によりをかけさせました」
「タチカゼ様」
「はい?」
 食堂のところに執事がたっていました。
「わが屋敷の主クドロワ様のご指示により、どの部屋も好きにつかってもらって結構ですが。地下室だけには入らぬよう」
 タチカゼは、さして気にも留めずその忠告を軽く受け流した。
 そして晩餐が始まった。

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