第二幕その八
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第二幕その八
「私は」
「どうされますか?」
「私も言いましょう」
その顔をあげての言葉であった。
「マリー」
「はい」
「貴女は私の姪ではありません」
彼女に顔を向けてさらに言うのだった。
「貴女は私の娘です」
「えっ、そんな」
「これは本当のことです。妹は既にバイエルンの方に嫁いで二十年になります」
このことも話すのであった。
「そして大尉と恋仲になったのは私だったのです」
「そうだったのですか」
これにはシェルピスも驚きを隠せなかった。
「貴女がだったのですか」
「大尉が戦場に向かった時に乳母である召使もこの娘と共に行かせたのですが」
そこで大尉は戦死し乳母も戦火に巻き込まれ死んだである。
「ですから。貴女は」
「何てこと・・・・・・」
「そんなことが」
これには皆唖然とした。マリーだけでなくトニオにシェルピスも。兵士達もそうであったしそれは客達も同じだった。皆一様に唖然としてしまっていた。
「そしてです」
「そして?」
「マリー、貴女の心もわかりました」
娘に対する言葉である。
「貴女は一緒になるべきです」
「一緒に?」
「そう、その方と」
トニオに顔を向けての言葉であった。
「一緒になりなさい。是非」
「宜しいのですか?」
「奥様には申し訳ありませんが」
ここでその美女、即ち公爵夫人に顔を向けて言うのであった。
「娘はこの隊長殿と結婚することになりました」
「左様ですか」
公爵夫人は意外にも彼女の言葉をありのまま受けたのであった。
「それではそうされると宜しいでしょう」
「御許し願えますか」
「御心を見せてもらってはそう言うしかありません」
公爵夫人の今の言葉は優しい笑みと共の言葉だった。
「ですから」
「有り難うございます」
「ではマリー」
「ええ」
ここでマリーはトニオの言葉に応えて彼にそっと寄り添う。
「これからは一緒に」
「そう。一緒だよ」
二人はこう言い合いながら手を取り合った。
「一緒にいよう。ずっとね」
「神の御前まで」
「では皆」
シェルピスがそんな二人をこの上なく温かい目で見ながら一同に告げてきた。
「祝おう、この幸せな二人を祝おう」
「ええ、それでは」
「是非」
兵士達がそれぞれワインを出してきた。それと共に杯も。
その二つが部屋の中にいる一同の手に運ばれて。そうしてそのうえでシェルピスが温度を取って高らかに叫ぶのであった。
「乾杯!」
「乾杯!」
「二人のこれからの永遠の幸福を祝って!」
「乾杯!」
皆で祝いの声を捧げ合う。その主役の二人のところに侯爵夫人が来て。そうして彼等を抱き寄せて言うのであった。
「御免なさい、今まで」
「お母様・・・・・・」
「そ
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