反転した世界にて5
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同時刻。
自室のベッドの上に寝転がりながら、携帯で友人との通話に興じる少女の姿があった。
整頓されている――とは言い難い、乱雑に散らかった部屋だ。ベッドのすぐ近くに配置されている本棚には、女性向け雑誌が所狭しと詰め込まれている。
枕元に置かれているノートPCからは、男性メンバーで構成されているボーイズバンドが唄うJ−POPが、垂れ流しになっていた。
如何にも"女子校生の一人部屋"といった様相の一室にて、少女――白上翔子はティッシュペーパーを手元に手繰り寄せながら、友人との会話を続ける。
「心当たりといえば、赤沢さんしかないわね。これは、ついに私の時代が来たってところかしら」
『ついにって。……ホント、無駄にポジティブだよね白上って。素直に尊敬するわ、あんたのそういうところ』
「ん? もしかして馬鹿にされてる?」
『褒めてるわよ。もやし女のくせに、頑張ってるよね』
「もやし女言うな! 今度、あんたの家の引き出しで――」
『はいはい』
もやし女――と、中学校の時だったか。だれが言い出したのかは定かではないけれど。気が付いた時には、それは白上翔子に対する不名誉なあだ名として、定着してしまっていた。
女のくせに線の細い――細すぎる容姿。にもかかわらず、不相応に張り出した肉付きの良すぎるバスト。
加えてその面もまた、この世界の男性であれば生理的に嫌悪感を催してしまうような、いわゆるどうしようもないほどのブス顔。
『風俗で入店を拒否されるレベル』『白上と付き合うくらいならダンゴ虫と結婚した方がマシ』『顔がもうなんかもう、フェルマーの最終定理』『ミドリムシ以下』――などと、散々な言われようであったことは、翔子の記憶にも新しい。
『あんた、今日はやけに赤沢さんにちょっかい出してたけどさ。正直やめといた方が良いと思うわよ、ああいうの』
「な、なんでよ。別に赤沢さん嫌がってなかったじゃない」
『根拠は』
「赤沢さん私にお弁当作ってくれるって言ってたんだから。どこに嫌いな人のお弁当をわざわざ作ってくれる人がいるのよさ!」
『どう考えたって断りきれなかっただけでしょアレ。空気読めないんだから』
「それは……、そうなのかな……」
言われてみれば。あのときの赤沢の様子は、自分が思うほどには好意的なものではなかったかもしれない。
常に私の方から顔を逸らしていたし、話し方も妙に余所余所しいというか。それなのに私は、肩と肩の距離が三十センチと離れていないくらいに引っ付いて、やっぱりあの時赤沢さんも心の中では嫌がっていたんじゃそもそも――。
――。
そこまで考えて、翔子は自らのネガティブ思考を放り投げる。
「もしホントに嫌がってたら、お昼ご飯を一緒になんてなれなかったわよ。少なくとも嫌
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