Episode 3 デリバリー始めました
皮を食して肉を食さず
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「では、言ってくるニャー 用意が整ったら連絡くれだニャ」
騎兵に引き上げられて馬の背に乗りながら、マルが後ろに軽く手を振った。
その後ろ姿を、彼の弟たちが並んで見送る。
実にほほえましい光景だ。
「このイカサマ野郎! 地獄の底に落ちればいいニャ!!」
「月の無い夜は、せいぜい背中に気をつけるがいいニャ!!」
"厳正なる"籤引きの結果、店に残された二匹のケットシーの声援に見送られながら、騎兵は来た道を引き返してゆく。
くじ引きがどのぐらい厳正であったかは、いろいろとやらかしたマル本人のみが知ることだろう。
きっと帰ってきたときには血の雨が降に違いない。
まぁ、キシリアにとっては知ったことではないが。
「さーて、さっそく買出しに出かけたいんだけど」
騎兵が帰ったことを確認し、さっそく行動に移ろうとするキシリア。
今から砦に詰めている兵士約100人分の弁当を作らなければならないのだから、時間はいくら会っても足りない。
だが、その瞬間に残されたケットシー達の体がビクンと硬直する。
全身に汗をかき、シッポの毛は完全に逆立ってまるで羽箒のような有様。
緊張と恐れのあまり肉球が完全に開き、視線はどこに逃げようかと部屋の隅を彷徨っていた。
何ゆえ彼等がここまで嫌がるのか……簡単に言えば、キシリアの買い物というのは監獄の強制労働に等しい重労働なのだ。
そもそも、キシリアの買い物は量もさることながら理解に苦しむぐらいマニアックものが多い。
しかも、訳あって本人が直接街に顔を出せないために買い物の内容はメモを渡されるのだが、まずそのメモがほとんど理解できないのである。
それと言うのも、キシリアの知識にある食材が地球のものであるため、たとえば「トマト」とかかれていても「トマト」自体は存在しておらず、「トマト」の特徴だけが記されたメモを片手に、その内容に類似したものを自ら探索しなくてはならないからだ。
しかも、頼まれたもののほとんどが魔界においては希少であるために、買い物に出された者は町中を駆けずり回る事になるのである。
しかも、苦労して買ってきた挙句に「これ、違うから」の一言で突っ返されることも珍しくない。
「あいたたた、持病の猫背の発作が」
「残念にゃけど、今日は星占いで買い物をしてはいけない日になっているニャ」
よほど嫌なのだろう。
ケットシー二人がそれぞれ明後日の方向を見ながら苦し紛れの言い訳を口にする。
ほほう?
キシリアの頬が引きつり、三日月にも似た不吉な笑顔をかたちどる。
こんな言い訳でキシリアを納得させることが出来るなら、地獄の法廷に閻魔は要らない。
その手には、金属製のハエ叩き。
ところどころに赤黒い奇妙な錆がついているが、深
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ