Episode 3 デリバリー始めました
皮を食して肉を食さず
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く理由を追求してはいけない。
あえてヒントを与えるならば、"使用済み"で"愛用品"だからだ。
ケットシーたちがこの家にやって来てからというもの、彼女がこれを使わない日は無い。
「――働け、クズ共」
静かな声と共にキシリアの振り下ろすハエ叩きの先端は、軽く音速を超えた。
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「せっかくの依頼なんだから、ちょっと凝ったモノでも作ってみようかな」
肉体言語による熱烈な説得により、ケットシーたちが買い物を引き受けると、キシリアはすっかり男に戻った口調で何を買うか独り言をはじめる。
その手には、羊皮紙を束ねて作った自家製のノート。
様々な食材の特徴や効能を記した虎の巻であり、これを読んでいるときのキシリアはほとんどトリップ状態なので、何を言われても大概は上の空。
日ごろ物理的に虐待されているケットシーたちからすれば、悪口を言ってもバレない至福のひと時でもある。
「……むしろ普通でいいと思うニャ。 向こうがほしがっているのもそういうものなんだし」
ゴネるような口調で異を唱えるのは、ケットシーの次兄であるポメ。
その言わんとするところは、『凝り性は結構なのだが、そのために滅多に手に入らないような珍品を探すハメになるのはまっぴら』である。
もっとも、そんな遠まわしな嫌味が通じる状態なら、とっくにハエ叩きが飛んできているのだが、あいにくと今のキシリアは余計な情報は脳が自動的にシャットアウトしてしまう。
「そうだな、それが相手に一番だとは思うんだが、それじゃ自分が面白くないんだよ……むしろ今回の件はこっちが一方的に押し付けられてるんだし、少しは楽しんでもいいと思わないか?」
予想通り、自分の都合のいい部分しか耳に入らないキシリアの様子にホッとするポメ。
口にしてから後悔する癖はやめたほうがいいのだが、おそらく一生彼はこのままだろう。
それがケットシーという生き物なのだから。
好奇心と思いつきの果てに死ぬのが彼等の正しい生き様であるが、ちっとも羨ましくないのはたぶん気のせいではない。
「確かにそれはあるニャ。 ただ便利に使われるのは面白くないニャア」
キシリアが嫌味に気づかないことをいいことに、ジト目で睨みながら自らも嫌味を口にするテリア。
三匹の中で一番用心深いのが彼だという意見には誰もがどうするだろうが、結局はケットシーレベルであることは言うまでも無い。
「……とりあえず、今回のコンセプトは豪華な病院食だ」
ようやく虎の巻をテーブルに降ろし、頬杖をつくキシリアの台詞にケットシーが首をかしげる。
「なんニャそりゃ?」
「ようするに、ただ美味しいだけじゃなくて、体にもいい食事ってや
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